「裁判に訴えてくるかもしれない」
数カ月の間に、裕規さんは寄与分について調べ、知識を身に付けていった。
だが、知識が身につけばつくほど、潤貴さんの言い分にますます納得できなくなっていった。
一方、相続の話し合いはあいかわらず平行線をたどっていた。
困った裕規さんは、知人の紹介によって、私のところへ相談にやって来たのだった。
「ずっと平行線だと、いずれは裁判に訴えてくるかもしれない。ただ裁判ははさすがに怖いから避けたいんです。どうにかなりませんか?」
裕規さんはすがるような目で私に言う。私は彼に、とにかく落ち着くように言った。
裕規さんが落ち着きを取り戻した頃に、詳細なヒヤリングを開始した。
その中で、これまで述べてきたようなこれまでの経緯を私は初めて知ったのである。
私は、潤貴さんの行為は、あくまできっかけ作りにとどまっているため、寄与分として認められるほどの特別な貢献とはいえないのでは、と感じた。
一般的に、寄与分が認められるような特別な貢献としては、無給に近い形で個人の事業を支えた、仕事を辞め長期間介護するなどの献身的な介護、故人の不動産の管理・修繕などを行っていた、といったケースがあげられる。
潤貴さんのように、単に投資のアドバイスをした程度では、結果的に財産が増加していても、「特別な貢献」とまではいえないと考えられる。
私は、裕規さんに、寄与分についての考え方を説明したうえで、潤貴さんには内容証明郵便を送付し、強気の姿勢をつらぬく方法を提案した。
「本来、家族間で内容証明郵便の送付まで行くのは、あまり気分のいいものではないでしょうが……私からご提案できる方法の中では、かなり効果的だと思われます」
それを聞いた裕規さんは、まっすぐ私を見つめて言った。
「じゃあ、お願いしていいですか?」
私はあらためて内容証明郵便について説明し、潤貴さんに送付する手続きを始めた。
