「盆踊りの音がうるさい」

「面倒なクレーマー?」

こずえがオウム返しに問うと、政孝はさも嫌そうに顔をしかめた。そのクレーマーのせいでよほど嫌な思いをしたのだろうとこずえは思った。

「そう。これまで受けたことがないようなトンデモなクレームでさ。どう対応していいか誰も分からなくて、結局、俺があちこち駆けずり回ることになってさ。だから、疲れちゃったんだよ……」

政孝は本当に疲れた様子でそう言った。盆踊り会場から帰ってきた時も全身汗だくだったので、言っていることは誇張というわけでもなさそうだ、とこずえは思っていた。

「そんなに大変だったの。いったい何があったのよ?」

「今日は予定通り19時から盆踊りを始めたんだが、始まって早々に、盆踊りをやめろっていうクレームが入ったんだよ」

「盆踊りをやめろ? それはさすがに乱暴じゃない? 何を根拠にそんなことを要求してきたの?」

こずえが身を乗り出した。政孝も、よほど不満がたまっていたのか、聞き役を得て、話したい気持ちが高まったようだった。

「そいつが言うには、盆踊りの音がうるさい、業務妨害だって」

「え、盆踊りが?」

「そう。そりゃもちろん、盆踊りだからさ、ちょっとうるさいかもしれんよ。広場中に聞こえるように、音量を上げているし、太鼓も叩いてるからな。祭りだから、賑やかにやるのが当たり前だろ? それを騒音だ、業務妨害だって言われるのは心外なんだよな」

「なるほど」