夫婦が選んだ苦渋の決断
静寂が訪れたリビングで、由香はぽろぽろと涙を流し始めた。
「……ごめんなさい。実は……夫と離婚協議中でお金がなくて怖かったの。保険にも入っていないし、認めたら支払えなくて……」
強気な態度の裏にあったのは、追い詰められた一人の母親の余裕のなさだった。由香は深々と頭を下げ、「本当にごめんなさい」と涙ながらに謝罪した。その姿を見て、美咲の激しい怒りも徐々にしぼんでいった。欲しいのはお金ではなく、誠意だったのだ。
夫婦で目配せを交わしたあと、優太は静かに切り出した。
「全額を一括で払えとは言いません。型落ちや年数経過の分も考慮して、15万円。これを月々1万円の分割で支払ってください。その代わり、もう家で暴れるような遊び方はしないよう、翔太くんときちんと話し合ってください」
全額が補填されるわけではない。だが、誠意ある謝罪を受け入れたことで、美咲の心に仕えていた重いモヤモヤはすっと消えていった。
後日、新しいテレビがリビングに届いた。画面に映る子供向けアニメを、陸と優太、美咲の3人で並んで見る。
ローンはまだ長く続くし、床には消えない傷痕も残っている。それでも、新しく届いた画面の明かりに照らされた家族の笑顔を見たとき、この家でまた新しい思い出を重ねていこうと、美咲は前を向くことができた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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