母娘の決裂後の一歩
家に帰った彩佳は里菜に電話をした。里菜には裁判のことなどいろいろと報告し、愚痴を聞いてもらっていた。
「あ、もしもし。さっきね、お母さんからお金を全額振り込んでもらえたみたい」
「……そう。なんか言われた?」
「まあ、いろいろ」
里菜は怒りをにじませていた。
「でも、これでようやく片付いたんだね。お疲れさま」
「うん、ありがとう……」
「彩佳、今家?」
「え、うん。そうだけど?」
「分かった。今から私、彩佳の家行くね。2人でパーッと飲んで、お祝いしよ」
里菜の提案に彩佳は慌てた。
「ちょっと待って。里菜だって明日は仕事でしょ?」
「気にしない、気にしない。こっちでいろいろとお酒とか買っていくから待ってて」
「……分かった。ありがとう」
「全然。私が上司の愚痴聞いてもらいたいだけ」
「任せて。いっぱい聞く」
電話を終えたあと、彩佳は冷蔵庫や戸棚の中身を確認して、つまみになりそうなものを見繕った。急な家飲みだったが、スナック菓子とあたりめ、それと燻製チーズがあれば十分だろう。
彩佳はベランダに出て、まもなくやってくる里菜の姿を夜の街のなかに探した。大丈夫。何が起きたって、私たちには待ち遠しい未来があるのだ。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
