<前編のあらすじ>
大学卒業を迎えた彩佳は、母・実代子から祝いのケーキとともに、幼いころから預けていた通帳、キャッシュカード、印鑑を受け取る。実代子は女手一つで彩佳を育ててきた一方、娘に細かく口を出すことが多く、彩佳は早く親元を離れたいと考えていた。
口座を確認した彩佳は、学費とは考えにくい2万~3万円の出金が何度もあり、合計約80万円に上ることに気づく。口座にはお年玉だけでなく、亡くなった父から相続したお金も入っていた。友人・里菜に背中を押され、彩佳は母へ使途を確認する。
実代子は具体的な説明を避け、必要な出費だったと主張する。彩佳が説明を求め続けると、「私が彩佳を育てる為にどれだけ苦労したか」と怒鳴り、自分が責められたかのように泣き出した。彩佳は何も解決しないまま、深いため息をついた。
●前編【「大した額じゃないんだから」口座に不審な出金履歴を発見…娘が毒母を問い詰めると返ってきた「信じられない暴論」】
独り立ちしても消えない疑念
泣いている実代子にそれ以上は何も聞くことができなかったし、その日以降も、これ以上聞いてはいけないという空気が実代子からにじみ出ているのを、ありありと感じた。彩佳の心のモヤモヤは晴れることはないまま4月を迎え、新生活が始まった。
新居は、会社の借り上げ社宅であるワンルームマンションだった。念願のひとり暮らしだというのに、例の80万円のことが頭の片隅に引っ掛かり続けている。
彩佳が本当に許せなかったのは80万という金額ではない。
大学を卒業し、就職も決まり、ようやく自分の人生を歩けると思っていた。父が遺してくれたお金も、お年玉も、彩佳が将来のために大切に取っておいたものだった。それすら実代子の都合で勝手に使われていたと思うと、本当は怒りたくも、憎みたくもないのに、胸の奥に冷たく黒い感情が広がった。
そんな折り、彩佳は日用品を買いに出かけた帰りに、駅前で配られていたティッシュを受け取る。裏にはお金のトラブルに関する無料相談の宣伝をする弁護士事務所のチラシが入っていた。
訴えるなんて考えてもみなかった。でも、実代子は絶対に話してはくれないし、このまま悩み続けるくらいなら、相談してみてもいいのではないだろうか。
そう思った彩佳は、気がつくとチラシに書かれた番号へと電話をかけていた。
