「流動性をどう設計するか」という思考軸

ここまでお話してきて、1つ提案したい思考軸があります。

オルタナティブ投資の第一歩を考えるとき、「株式か不動産か」「上場か非上場か」「NISAか別枠か」という二項対立の議論になりがちです。商品の種類で議論すると、どうしても「どれが儲かるか」という話に流れていきます。

そうではなく、「自分のお金の流動性を、どう設計するか」という軸で考えてみてはいかがでしょうか。

例えば、ご自身のお金をこんなふうに仕分けてみるのです。

資金を「使う時期」で整理する
筆者作成
 

1つ目は、日々の生活や数年以内に使うお金。ここでは、流動性と元本の安定性が何より大事です。必要なときに取り崩せること、そしてそのタイミングで大きく減っていないことが重要なので、預金や短期の債券などが中心になります。

2つ目は、使う時期にある程度の余裕があり、価格変動も一定程度受け入れられるお金。ここでは、必要に応じて換金できる流動性を保ちながら、上場株式やインデックス投資信託、ETF(上場投資信託)など、比較的換金しやすい商品を活用する余地があります。ただし、必要なタイミングで値下がりしている可能性があるため、確実に使う予定のあるお金とは分けて考える必要があります。

そして3つ目が、あえて換金機会(流動性)を手放してもいいと決められるお金。 使う時期が数年〜10年先にあり、そのあいだの値動きは引き受ける前提です。このような資金こそ、「不便さの対価」をしっかり取りに行きたいところです。

3つ目の層がどれくらいあるかは、人によって大きく違います。それでも、この仕分けを一度してみるだけで、「自分にとってのオルタナティブ投資の意味」が、ぐっと具体的に見えてくるはずです。

商品を選ぶより先に、まずはこの「流動性の家計簿」を自分なりに作ってみる。それが、私がご提案したい第一歩です。

オルタナティブ投資の第一歩は、商品選びではない

機関投資家の真似はできません。そして、する必要もないと、私は思っています。

なぜなら、個人投資家には、プロには真似のできない武器——自分のお金を、自分の都合で設計できる自由——があるからです。

ご自身のお金のうち、用途が決まっていて、それまで動かさなくていい部分はどれくらいあるのか。長く動かさなくていいお金については、流動性を一部諦めることで「不便さの対価」を取りに行くという選択肢を、どの程度取り入れるのか。

その問いに、自分なりの答えを持つこと。それがオルタナティブ投資の「第一歩に何を選ぶべきか」を考えるうえでの、本当の出発点になると私は考えています。

次回は、その「しばらく動かさないと決めたお金」の話を少し違う角度から続けてまいります。「値動きしない投資」は、本当にいいことなのか。流動性とリターンの関係について、丁寧にひもといていく予定です。それでは、また来月お会いしましょう。