前回は、GPIFとハーバード大学基金——アプローチの正反対な2つの機関投資家が、それぞれ違うやり方で「株式だけに頼らない」設計を組んでいるというお話をしました。
ここまでお読みいただいた方の中には、こんな疑問を抱いた方もいらっしゃるかもしれません。
「プロの考え方は分かった。でも、私たち個人が具体的に何から始めればいいのか、よく分からない」
今回はそこに、少し違う角度からお答えしたいと思っています。キーワードは「不便さの対価」。機関投資家の考え方をどのように個人の投資に取り入れられるのか、今日から実践できる「オルタナティブ投資の第一歩」をお伝えします。
「不便さの対価」という考え方
第1回、第2回では、機関投資家が上場株式や債券だけでなく、不動産やプライベートエクイティといったオルタナティブ資産を組み入れていることを見てきました。
ここで、立ち止まって考えてみていただきたいのです。これらの資産には、ほとんどの場合、「いつでも売れるわけではない」という制約がついて回ります。プライベートエクイティ(未公開企業への投資)なら、長期運用が前提で途中換金が制限されるファンドが少なくありません。機関投資家向けの不動産ファンドも、運用期間中は引き出せないのが基本です。
それなのに、機関投資家はわざわざこうした「不便な資産」を自身のポートフォリオに組み込んでいる——よく考えると、なかなか不思議な話だと思いませんか?
答えはシンプルです。その「不便さ」に対して、追加のリターンが乗っているから。
専門用語では「イリクイディティ・プレミアム(非流動性プレミアム)」と呼びます。覚えにくい名前ですので、ここでは「不便さの対価」と読み替えていただいて構いません。
実はこの「不便さの対価」、私たちは日常生活の中でもすでに体験しています。
例えば、普通預金と定期預金。1年定期、3年定期、5年定期と、引き出せない期間が長くなるほど、金利は少しずつ高く設定されています。お金を一定期間、自由に動かせない代わりに、銀行が少し多めの利息を払ってくれる——これが「不便さの対価」のごく身近な例です。
機関投資家がオルタナティブ資産で取りに行っているのは、ちょうどこの構造をもっと大きなスケールで応用したもの。そう考えていただくと、しっくりくるかと思います。

