2026年9月後半の新規設定ファンドは、収益源の多様化を求める投資家のニーズに応えようと、より多くの選択肢が提示された。前半(9月10日まで)では、半導体・防衛テック・アジア株といった“テーマの先端”が並んだが※、後半は、国内株式の配当成長、米国テクノロジーの集中投資、高利回り債券の利回り確保という、より“収益源の質”に踏み込んだ商品設計が目立つ。
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この三つの軸は、「金利高止まり」、「日本企業の株主還元強化」、「米国テックの収益構造の底堅さ」、そして、「高利回り債券の利回り優位性」といった市場環境の変化に商品設計の側から切り込んだ“構造的な視点”によって浮かび上がってきた。
9月後半の新規上場ラインナップは「インカム」「成長」「利回り」で明確に三極化している。
国内株式は、「インカム」重視で「配当成長」を取りに行く「東京海上・配当成長日本株ファンド(年4回決算型)」が新規設定された。また、従来は「成長」を追求していた海外株式でも「Tracers NASDAQ100インデックス(毎月決算・予想分配金提示型)」や「eMAXIS 高配当全世界株式(オール・カントリー)配当払出型」など分配型が設定される。
一方、「成長」重視の海外株式は米国テックの“収益源への集中”がみられる。「楽天・米国テクノロジー株式集中投資インデックス・ファンド」、「US・高成長株式ファンド」などだ。
そして、債券は、「利回り」を期間・信用・通貨の三要素を分散する様々な切り口で商品が設定された。「トラノテック グローバル高利回り債券ファンド(為替ヘッジあり)」、「ニッセイ投資適格社債2026-09(為替ヘッジあり・4年投資型)」、「JPモルガン・グローバル・ハイブリッド証券ファンド(各種)」、「Oneグローバル債券2026-09(限定追加型)」、「超長期日本国債(2046年満期)」など一気に投資対象が広がっている。
注目ファンド3本
★ 東京海上・配当成長日本株ファンド(年4回決算型)
東京海上アセットマネジメントが設定する「東京海上・配当成長日本株ファンド(年4回決算型)」は、“高配当”ではなく“配当成長”を軸にした銘柄選定を行うアクティブファンドだ。このファンドは、日本企業の株主還元強化という構造的な変化に着目している。高配当株(配当利回り=割安性)だけではなく、「増配を続ける企業(配当の成長性)」に焦点を当て、持続的な配当が可能となる着実な利益成長トレンドを前提条件として配当性向を引き上げる「資本効率を意識したガバナンス(企業統治)・財務健全性」にも注目した企業分析を行うとしている。
この「資本効率を意識したガバナンス」の観点は、東証が2023年3月に要請した「資本コストや株価を意識した経営」に合致し、当時、「日経平均」2万7000円台、「TOPIX(東証株価指数)」2000ポイント前後から、「日経平均」7万円(2026年6月)、「TOPIX」4100ポイント超(2026年8月)への株高の背景になった。特に海外機関投資家の間で国内株式の質的な変革に対する評価が高く、今後も将来にわたって国内株式市場の背骨を支える重要な要素になると考えられる。この新しい時代にふさわしい企業群で構成され、かつ、配当利回りの面でも魅力のあるファンドとして注目される。
長期で運用し続けたい投資家にとっては、配当によるインカム収入が継続的に増加していく効果は大きい。保有し続けることに楽しみが加われば、長期投資を促すことにもつながるだろう。しかも、NISA成長投資枠の対象であるため、配当が課税されずに丸ごと手に入る点も分配金収入を年金プラスαとして楽しみにしている高齢者にメリットと感じられよう。
★ 楽天・米国テクノロジー株式集中投資インデックス・ファンド(愛称:楽天・テック12)
楽天投信投資顧問が設定する「楽天・テック12」は、米国NASDAQ上場の超大型テクノロジー株式12銘柄に集中投資する“選別の強度”が高いインデックスファンドだ。ドイツの指数サービス会社Solactive社と協調してこのファンドのために新しいインデックス「Solactive・米国超大型テクノロジー株式12指数」を生成したという。NASDAQ上場のテクノロジー株式の中から時価総額が大きい12銘柄を選定し、「NASDAQ100」よりもさらに“濃度の高い”テック集中投資になる。
具体的な投資銘柄は、2026年6月末時点でエヌビディア、アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、ブロードコム、スペースXの上位7銘柄、そして、メタ・プラットフォームズ、テスラ、マイクロン・テクノロジーズ、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、シスコ・システムズになっている。指数は、上位7銘柄を各12%(合計84%)投資し、その他5銘柄を各3.2%(合計16%)組み入れる構成になっている。構成銘柄の見直しは四半期に1回(2月、5月、8月、11月)。スペースXのような超大型IPOがあった場合は、時価総額上位12の基準を満たしていれば速やかに指数に組み入れる。
「Solactive・米国超大型テクノロジー株式12指数」の構成基準に基づいて過去の実績をシミュレーションしたところ、2021年6月末~2026年6月末までの5年間で、「NASDAQ100」や「S&P500」を大きく上回った他、同じようにテクノロジー株式10銘柄に集中投資する「NYSE FANG+」(メタ、アップル、ネットフリックス、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、パランティア・テクノロジーズ、エヌビディア、ブロードコム、マイクロン・テクノロジー)をも上回るパフォーマンスを記録している。
★ JPモルガン・グローバル・ハイブリッド証券ファンド(愛称:ザ・ハイブリッド・コレクション)
JPモルガン・アセット・マネジメントが設定する「ザ・ハイブリッド・コレクション」は、「高インフレ・高金利」という「金利のある世界」に転換した今だからこそ注目されるインカム収益(利回り)を追求する債券ファンドだ。組み入れるのは、通常の債券(社債)の発行体リスクに加えて、通常の債券よりも法的弁済順位が低い(劣後する)ため元金利の回収リスクや価格変動リスクは相対的に高くなる一方で利回りも高くなる「ハイブリッド証券」を投資対象にしている。「劣後債」、「優先証券(比較的株式に近い性格、劣後債より価格変動が大きい)」、「CoCo債(偶発転換社債)(一定の偶発条件が発生した際に普通株に強制的に転換される転換社債)」などが主な投資対象。発行体は、先進国の主要金融機関、また、電力・エネルギー・通信など社会インフラを支える公益企業を選んで投資する。
2026年6月末時点のモデル・ポートフォリオでは、「為替ヘッジあり」の場合、平均利回りは3.2%で、グローバル投資適格社債の2.3%、日本投資適格社債2.2%と比較して優位な利回りを実現。「為替ヘッジなし」の場合は平均利回りが5.6%で、グローバル投資適格社債の4.7%、グローバル国債の3.5%より優位な利回りになっている。また、グローバル・ハイブリッド証券の過去のリターンを振り返ると、投資開始時の利回りとリターンに明確な相関があり、投資開始時の利回りが高いほど、リターンも高い傾向がある。たとえば、投資開始時の利回りが7%台(UBSがクレディ・スイスの救済買収を発表した2023年3月頃など)の場合は3年間投資した年率リターンの平均が11.8%、6%台の場合は10.5%という好成績になり、現状のように5%台の時でも6.7%という成績だった。これが利回り3%台の時に投資すると1.0%程度のリターンしか得られず魅力がない。現状は投資タイミングとしても魅力的といえる。
三つの収益源をどう組み合わせるか
9月後半の新設ファンドは、「成長(米国テック)」、「インカム(配当成長)」、「利回り(高利回り債券)」という三つの収益源が明確に分かれていることが特徴だ。世界的な金利上昇により、債券投資でも魅力的な収益期待が持てる戦略が現れるなど、収益機会が多様化していることが背景だ。
投資家は自身の資産配分の中で、どの収益源をどの比率で組み込むかなど、さまざまな選択肢がある。また、長期積立・若年層には「成長」のテック株式集中型、シニア層・退職金運用にはより安定し、定期的な分配金が入る「インカム」、そして、株式への投資は価格変動リスクが大きすぎると投資に二の足を踏んでいた安定収益志向の投資家には「利回り」で魅力的な債券ファンドという選択肢もある。このような複数の選択肢を組み合わせて運用ポートフォリオを作っていくことが、これからの資産運用戦略の“軸”となっていくだろう。
※新規設定の情報は一般社団法人資産運用業協会の公開データに基づいています(2026/9/24 取得)
