頑張って働いているのに、余裕が一切ない
車は手放しました。海外旅行はもちろん、旅行そのものもほとんど行かなくなりました。行くとしても国内で、できるだけ費用を抑えます。外食の回数も自然と減りました。月に1回行くときもファミリーレストランです。
夫婦ともに一生懸命働き、それぞれがキャリアを積み重ねてきました。決して贅沢をしている感覚はなく、教育費が突出していること以外は、日々を堅実に暮らしています。それなのに、毎月の口座残高におびえながら暮らしている。その現実が、何よりつらかったといいます。
「夫婦ともに頑張って働いてきたんです。でも、毎月残高ばかり気になってしまう。将来のことを考えると眠れない日もあります」
昭和の普通は、令和の普通ではない
教育ジャーナリストとして取材を続けていると、美香さんと同じ言葉を何度も耳にします。
「親の時代はできたのに」
「共働きだから大丈夫だと思っていた」
その気持ちは、団塊ジュニア世代としても深く共感します。けれど、残念ながら今は住宅価格も、物価も、教育費も、親世代とはまったく違います。
そして教育費は10年以上にわたって、非常に高額な支出となる可能性があります。山場に思えた中学受験も、そこで終わりではありません。私立中学へ進学すれば、授業料に加え、通学費、学校指定品、部活動、英語や数学の補習、大学受験に向けた塾……。子どもの成長とともに、新たな支出が次々と生まれます。
数字だけを見れば、世帯年収1400万円は決して少なくありません。それでも現実には、教育費や生活費が膨らみ、夜、心配で眠れないという家庭が存在します。
親世代の「普通」は、令和の子育て世帯の「普通」ではなくなりました。「うちだけがおかしい」と自分たちを責める必要はありません。大切なのは、ネットに並ぶ「年収○万円なら大丈夫」という数字ではなく、自分たちの家計と向き合い、夫婦で何度でも話し合うこと。
教育費は、子どもの未来への投資です。
でも、そのために親が笑顔を失い、毎月の残高に怯えながら暮らすことが、本当に子どもの幸せにつながるのか――。
取材を重ねるたびに、私はその問いを自分自身にも投げかけています。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。