ついに感情が爆発
謝罪だけして事なきを得るという方法もあった。しかし連日連夜、やれるだけのことをやっているという自負はあった。掃除だって体力の限界を超えてもやっていた。だいたい路上のゴミに自分の責任があるとは思えない。なのにどうして全責任がこちらにあるような言われ方をしないといけないのかと怒りが湧いてきた。
「でも全部が全部、うちの客だとは限らないですよね? たむろしてる奴らのゴミやポイ捨てだってありますよ?」
「今までこんなことはなかった。ゴミがうちの前に捨てられるようになったのはワールドカップが始まってからだよ。夜中も外で騒ぐ声が聞こえるという話だって聞いてる。まあお祭りのようなものだし、それに便乗して営業をするのも悪いとは言わない。ただやるのなら人様に迷惑をかけないようにしてくれと言ってるんだ」
慶介は拳を握りしめた。騒いでいるのは客が勝手にやっていることだ。なのにどうしてこちらが責められないといけないのかと理不尽さを感じた。
「……だから今から掃除をしますよ」
「この状況が今後も続くようであればこっちも考えがある。出るとこ出たっていいんだ」
「は? 出るとこって何ですか? そんな脅しみたいな言い方しなくてもいいでしょう? こっちはちゃんとやるって言ってるんですから」
「脅しじゃない。こっちも店を守るために言ってるんだ」
慶介は坂本に鋭い視線を向けた。
「だったらやってみろよ……! こっちはちゃんと許可を取って営業をしてるんだからさ!」
坂本もこちらを睨みつけていたが、落ち着くように軽く息を吐き出した。
「許可を取っていれば何をしてもいいわけじゃない。町田さんがちゃんとしてくれればこっちだって言わなくて済んだんだ」
そう言い残し、坂本は自分の店に戻っていった。慶介も掃除道具を取るために店内へと戻った。つい先ほどまでの充実感は嘘のように消えてしまっていた。
●夢だったスポーツバーを開いた慶介。ワールドカップ特需で大繁盛する一方、客の騒音やゴミ問題で向かいの和食店主・坂本にクレームをつけられてしまう。怒りを我慢できず、ついに強気で言い返してしまい、激しい衝突に…… 後編【近隣トラブルでスポーツバーが陥った営業停止危機…謝罪と対策の先で待っていた“決勝夜の奇跡”】にて、詳細をお伝えします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
