明け方の店先に異変
店内の片付けがひと段落すると、慶介は外に置いてある灰皿を回収しようと扉を開けた。店の前に置いた喫煙スペースの灰皿は吸い殻でいっぱいになっていた。灰皿の周りにも踏みつけられた吸い殻がいくつも散らばっている。さらに少し離れた場所にはコンビニの袋や空き缶、カップ麺の容器まで転がっていた。
「……今日も派手にやってんなぁ」
ため息混じりにつぶやいたとき、向かいの和食屋のドアが開き、中から険しい顔をした和食屋の店主、坂本慎太郎が慶介に歩み寄ってきた。
坂本はまだ開店前だというのに、すでに白い作務衣に前掛けをつけていた。毎朝、早くから仕込みをしているのだろう。深夜営業をしているバーもバーだが、和食屋も大変なんだなと思ったが、坂本は手に持っていた透明のポリ袋を不愛想に慶介へと突きつけた。何かと思えば、中には大量のゴミや空き缶が入っていた。
「町田さん、これはうちの店の前に捨てられてたもんだ。これはうちの客が捨てたものだと思うか?」
怒りをにじませた声だった。ゴミの中身は今、慶介の店の前にあるものとほぼ同じだった。
「今日だけじゃない。ここ最近、ずっとゴミが店の前に放置されている。こっちは仕込みの前にいつもあんたの店の後始末をやらされてるんだぞ?」
静かな言葉だったが、それでもはっきりとした敵意が向けられているのが分かった。
「……すみません。掃除はしてるんですが、1人でやってるものでどうしても限界があるんですよ」
「言い訳なんて聞く気はない。今後、このようなことのないようにしてくれと言ってるんだ。こんなふうにゴミが散乱してる状態じゃ、うちの店の品も落ちる。営業妨害なんだよ」
