「引き算」の改革も断行 不採算事業は見直し、エチレン生産終了へ

もう1つ、株価押し上げの要因になったと考えられるのが不採算事業の整理です。先述のとおり、旭化成はエレクトロニクス事業を重点成長領域に位置付けていますが、一方で同じマテリアル事業のサブセグメントであるパフォーマンスケミカルとエッセンシャルケミカルは「収益改善・事業モデル転換」領域と定義し、構造改革を進めています。

旭化成はこれまでも事業の整理を進めてきましたが、足元でもその勢いは落ちていません。25年にはメタクリル酸メチル(MMA)モノマーやヘキサメチレンジアミン(HMD)などの化学品からの撤退を決断しています。

足元で注目を集めているのがエチレン事業の縮小です。基礎化学品であるエチレンは中国による輸出拡大が世界的な供給過剰を招き、国内勢は苦戦する環境が続いていました。これにより、エチレンなどを生産する国内のナフサクラッカーは14年頃から停止されるケースが相次ぎ、エチレン生産量も減少してきた経緯があります。

そして、旭化成は26年1月、三菱ケミカルおよび三井化学と共同でエチレン事業を統合する方針を固めました。30年度をめどに三菱ケミカルグループと50%ずつ出資する三菱ケミカル旭化成エチレンの水島工場(岡山県)を停止し、能力を三井化学へ集約する計画です。

集約にあたっては新会社を設立する方針で、その出資比率は三菱ケミカルと三井化学が45%ずつ、旭化成は10%にとどまる予定となっています。この集約で旭化成のエチレン事業は大きく縮小する見通しで、残る部分も設備の共用化による生産効率の向上が期待されます。

旭化成は重点成長領域には積極的に投資すると同時に、不採算事業の見直しも着実に進めてきました。このポートフォリオ改革は全体の利益率向上に貢献するとみられ、エチレン工場の停止からは今後も改革を進める意思がうかがえます。

同社の株価を支えているのは、半導体といった「成長事業への期待」だけでなく、「低採算事業から撤退する実行力」も要因としてあるでしょう。