供給制約下におけるインフレリスク
さらに、民間設備投資が進むかどうかを不確実にしている背景が供給制約です。特に労働供給制約が、思いのほか設備投資の促進を妨げる可能性があります。
図表2は日銀短観の雇用人員判断DIと生産・営業用設備判断DIですが、2025年1月の「展望レポート」では、近年、人手不足によって前者の不足超幅が拡大しているにもかかわらず後者の不足超幅が拡大していないことを、労働供給制約の証左として指摘しています。
<図表2 雇用人員判断DIおよび生産・営業用設備判断DIとGDPギャップ>
こうした労働供給制約がきつい下で、企業の設備投資が活発化すれば、当然、賃金や物価に大きな上昇圧力がかかることになります。設備投資が供給力押し上げに寄与するまで時間がかかることを踏まえれば、しばらくは、特に企業間取引における物価(企業物価指数)が高まりやすい状況になることが予想されます。
「財政従属」への懸念が長期金利の上昇に拍車をかけるリスク
インフレが高まればそれを織り込み、長期金利が上昇します。加えて、日本銀行が財政従属に陥るという懸念が長期金利の上昇に拍車をかける可能性もあります。
ロイター通信は25日、「7月にまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、民需を支える適切な金融政策運営が非常に重要との認識を示す方向で調整に入った」と報じ、長期金利が上昇しました。
実際、そうした記述があるかどうかは骨太の方針が公表されるまで分かりませんが、市場は利上げを進める日銀に対して高市政権が圧力をかけようとしているとの見方を強めています。
前出の内閣府による「日本成長戦略の下での中長期的な経済・財政の姿に関する試算」では、民間投資が最も誘発されるケースで実質国内総生産(GDP)成長率が1%台後半、名目GDP成長率が3%台半ばまで高まり、2040年度には名目GDPが1,100兆円に近づくとの結果を示しています。
高市早苗首相は25日の経済財政諮問会議で、「成長戦略の経済効果が十分に発現した場合、一定の追加的な財政支出の下で、債務残高対GDP比がおおむね安定的に低下する姿となり、『経済成長』と『財政の持続可能性』の双方が実現できるとの見通しが示されました」と述べました。
しかし、一つ疑問なのは、その試算の裏側にある長期金利の姿です。資料にはそれに関する記述が見当たりません。潜在成長率は1.8%との記述がありますので、それに物価安定目標の2%を足した4%くらいかなといった想像はできますが、いずれにせよ潜在成長率の上がり方といい、試算そのものが少し楽観的な印象は拭えません。
長期金利の想定が変われば、高市首相が言う「債務残高対GDP比がおおむね安定的に低下する姿」も変わってきます。従って、長期金利の上昇につながる利上げは避けたいということなのかもしれませんが、日銀に圧力をかけるといった姿勢そのものが長期金利を押し上げ、円安を助長させることにつながるため注意が必要です。
