米国ではAI開発競争の激化を背景に、データセンター建設が急拡大している。マイクロソフト、アマゾン、グーグル、メタなどの大手IT企業は、生成AI向けサービスの拡充に向けて巨額の設備投資を進めており、その中核を担うのがデータセンターである。AIの学習や推論には膨大な計算処理が必要となるため、高性能半導体を大量に搭載したデータセンターへの投資が世界的に拡大している。
米国国勢調査局によれば、データセンター建設支出は近年急増しており、2026年4月には年率507億ドルとなった(図表1)。これは公共交通インフラ投資(499億ドル)を上回る規模である。2010年代半ばまでデータセンター建設は比較的小規模な投資分野に過ぎなかったが、生成AIブームを契機に急拡大した。現在では道路や鉄道などの公共インフラと肩を並べる規模へと成長しており、データセンター建設は米国の設備投資や建設投資を押し上げる重要な要因となっている。
実際、米国経済は中東情勢の緊迫化に伴う原油価格上昇などの逆風に直面しているものの、AI関連投資の拡大が景気を下支えしている。データセンター建設は建設業だけでなく、電力設備、通信設備、半導体など幅広い産業への波及効果を持つことから、AI投資が米国経済を支える重要な成長エンジンの一つとなっている。
もっとも、データセンター建設の急拡大は新たな課題も生み出している。その代表例が電力需要の急増である。国際エネルギー機関(IEA)によれば、米国のデータセンター電力消費量は2024年の183TWh(1兆ワット時)から2030年には426TWhへ拡大する見通しである(図表2)。わずか6年間で2倍超となる計算であり、2030年までの米国の電力需要増加分の約半分をデータセンターが占めると見込まれている。
こうした電力需要の急増を受け、一部地域では電力供給能力や送電網整備が課題となっている。アリゾナ州フェニックスでは、電力会社APSがデータセンター向け料金を45%引き上げる案を提示したほか、家庭向け料金についても引き上げを申請しており、AI向けインフラ整備費用を誰が負担するのかが議論となっている。データセンターの建設は雇用創出や税収増加など地域経済への恩恵をもたらす一方、電力料金の上昇を懸念する住民の反発も強まっている。
さらに、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(6月3日)によれば、電力供給や送電網整備の遅れを背景に、一部のデータセンター建設計画では着工や稼働開始の遅延も生じている。AI関連投資は当面、米国経済を支える成長ドライバーであり続けるとみられる。しかし、今後は需要不足ではなく、電力供給能力や送電網整備の遅れがデータセンター建設のボトルネックとなる可能性がある。AIブームの持続性を占う上でも、電力インフラの整備状況や電力コストの動向が焦点となろう。電力供給制約の解消が成長の鍵を握る。


