トランプ政権2期目では、移民政策の厳格化が政権運営の中核となっている。ICE(移民・関税執行局)に対する十分な予算措置を通じて、南部国境管理や不法滞在者の摘発・送還を強化し、不法移民流入の抑制を政策の主要な成果として位置付けている。
実際、南部国境からの不法越境者数は、バイデン前政権時代に月次で25万人のピークをつけたものの、トランプ政権2期目のスタート後、2025年2月以降、1万人を割る水準まで急減した(図表1)。こうした移民流入(フロー)の減少は、外国生まれの労働力人口というストックにも明確に表れており、25年3月に3,372万人のピークを迎えた後、12月には3,243万人と、ピークから▲129万人減少した。
移民流入の減少は人口統計にも反映されている。米国国勢調査局によると、25年7月1日時点の人口増加率は0.5%と前年同期の1.0%から半減した(図表2)。このうち、純移民流入人口の寄与度は24年の0.8%ポイントから25年に0.4%ポイントへ大きく低下しており、人口増加率の鈍化は主として移民減少によるものである。米国では自然増による人口増加率が低位にとどまるなか、移民人口の動向は今後の人口増加率を左右する重要な要因となろう。
この人口・労働供給の変化は、中長期的には潜在成長率を通じて実体経済に影響を及ぼす可能性がある。潜在成長率とは、インフレを加速させることなく達成可能な経済の基礎的な成長率であり、労働供給、資本蓄積、生産性の伸びによって規定される。近年の高水準の移民流入は、労働供給の増加を通じて潜在成長率を押し上げる方向に作用してきたが、移民流入が減少すれば、労働供給の鈍化を通じて潜在成長率を押し下げる要因となり得る。
労働供給に加え、需要や投資行動も含めて総合的に評価したものが、ペンウォートン予算モデル(PWBM)による分析である。PWBMは、移民や税制などの政策変更が、労働供給、消費、投資行動を通じてマクロ経済に及ぼす影響を分析する政策評価モデルである。PWBMによると、不法移民が今後10年間に年間100万~120万人規模で送還され、かつ新規の不法流入が抑止されるケースでは、労働供給の縮小や需要減退、資本蓄積の鈍化が同時に進み、2034年の実質GDPの水準はおよそ3%程度押し下げられることが示されている。移民政策の厳格化は、一時的な景気変動ではなく、成長力を引き下げる構造的要因として作用する。
一方、最近ではICEを巡る殺害事件などを受け、有権者の間で移民政策やICEに対する支持率が低下しているとの調査結果もみられる。中間選挙を控えるなか、看板政策である移民政策への支持低下は、成長下押しという経済的コストに加え、政治的にもトランプ政権には無視できないリスクとなりつつある。移民政策の厳格化がもたらす経済的影響と政治的帰結の双方をどう管理していくのかが、2期目政権運営の重要な試金石となろう。


