母に伝えた本当の気持ち
やがて真希は販売元のページを開き、明細に書かれた番号と照らし合わせながら解約手続きを進めた。途中で何度か小さな文字の説明を読み直し、母にも確認を取る。申請画面を送信すると、次回分から停止するという表示が出た。
「これで、次からは届かないはず」
「本当?」
「うん。ただ、確認のメールが来るみたいだから、あとで私にも見せて」
真希はメモ用紙に、販売元の名前、問い合わせ番号、申請した日付を書いた。母は座椅子に座ったまま、申し訳なさそうにその手元を見ている。
「ごめんね。こんなことまでさせて」
「いいよ。結構分かりにくかったし、母さんが1人でやるのは大変だったと思う」
真希はそう言ってから、ゆっくり息を吐いた。
「でも、次からは何でも1人で抱え込まないで。分からないものは、分からないって言っていいんだから」
母は小さくうなずいた。
段ボールの片付け作業が一段落すると、真希は母の向かいに腰を下ろした。
「困ったことがあったら、早めに私を頼ってよ。買い物でも、こういう手続きでもさ」
母は視線を落とし、膝の上で指を重ねた。
「でも、あんまり迷惑をかけるのも」
「迷惑じゃない。むしろ母さんが私に遠慮して無理する方が寂しいって」
母はすぐには顔を上げなかった。それでも、しばらくして小さくうなずいた。
「分かった。今度から、分からないことがあったら真希に聞くわ」
「うん。そうして」
そのとき、隣の部屋から息子が顔を出した。アニメを見終わったのだろう。
「おせんべい、結局なかったね」
あまりにも唐突な話題に、母は苦笑いを浮かべた。
「ごめんね。今度来てくれるまでに買っておくわ」
「いいよ。ぼくが買ってきてあげる。ばあばは休んでて」
真希は思わず息子を見た。母も一瞬目を丸くし、それから口元をゆるめる。
「頼もしいわねえ。ありがとう」
「うん。買うのはママのお金だけど」
息子の言葉に、真希と母は同時に吹き出した。
出汁の香りが漂う座敷では、きれいに折り畳まれた段ボールが、午後の光に照らされていた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
