<前編のあらすじ>

真希は、1人暮らしをする母・美津子から、腰痛で重い買い物がつらいので手伝ってほしいと頼まれる。真希は久しぶりに小学生の息子を連れて実家へ向かった。

実家で再会した母は、電話で想像していた以上に腰の状態が悪く、家の中にも小さな乱れが見え始めていた。真希はスーパーで大量の生活用品や食料を買い込み、作り置きまで始めるが、きれい好きだった母の変化に複雑な思いを抱く。

そんな中、息子が台所の戸棚を開けると、大量のサプリメントの箱が見つかる。ごまかそうとする母を見て真希は、怪しい健康商法や定期購入トラブルに巻き込まれているのではないかという強い不安を抱く。

●前編【「これ、どうしたの?」実家で見つけた大量のサプリ…娘が凍りついた母の異変の正体

大量サプリの正体

真希は息子を居間に座らせ、母と隣の座敷へ移った。息子はまだ気にしている様子でこちらを見ていたが、次第にテレビ画面に流れるアニメに心を奪われていった。

「母さん、これ、ちゃんと説明して」

真希はサプリメントの箱を1つ持ったまま、座敷で母と向かい合った。母は座椅子に腰を下ろし、膝の上で両手を重ねている。

「そんなに怖い顔しなくてもいいじゃない」

「怖い顔にもなるよ。だって、あんなに大量にサプリがあるんだよ」

「本当に、ちょっと試すだけのつもりだったのよ」

「試すって、何を?」

「だから、その……体にいいならと思って」

母の声は徐々に細くなって消えた。

少し試すだけのつもりだったものが、どうして堆く積まれるほど増えるのか。

「誰から買ったの?」

「誰っていうか……いつからか毎月届くようになったの」

「毎月?」

真希は思わず聞き返した。母は小さくうなずくだけで、それ以上は説明しない。胸の奥に芽生えた不安が、苛立ちへと変わっていく。

「ちょっと、箱を見せて」

真希は台所の収納から、段ボールを手当たり次第に座敷へ運んだ。

段ボールの側面には、配送伝票が貼られたまま残っており、差出人の欄には、小箱と同じ会社名が並んでいる。中には、サプリメントの箱と一緒に明細らしい紙も入っていた。真希が順番に日付を確認すると、去年の夏頃の日付のものまで出てきた。

「母さん、これ、去年の夏からじゃない。10カ月近く続いてるよ」

「そんなに経ってたかしら」

「経ってたかしら、じゃないよ。自分で申し込んだんでしょ」

つい語気が強くなり、真希はすぐに口を閉じた。母は腰に手を当てたまま、ばつが悪そうに目を伏せている。呼吸を整えてから、真希は明細を隈なく読んだ。支払い欄には、口座番号の一部が印字されている。

「これ、毎月お金払ってるよね」

「たぶん……そうね」

「たぶんって……」

どうしてこんなに長く放っておいたの。非難の言葉を、真希はすんでのところで飲み込んだ。

目の前の母は、座っているだけでもつらそうに腰をさすっている。沈黙が流れると、隣の部屋から、テレビの明るい声が聞こえてきた。しばらく真希は明細を握ったまま、怒ることも、すぐに慰めることもできず、散らばった箱を見下ろしていた。