居心地のいい出会い

毎日連絡を取り合うわけではなかったが、何回か食事にも行った。

「え、じゃあいつも外食なんですか?」

絵梨香が驚いた声を出して目を丸くした。

話の発端は、お互いに酒も入って気持ちも緩み始めたころ、「佑都さんは美味しいお店たくさん知っていますよね。ひょっとして遊んでる感じですか」と冗談めかして言われたことだった。

「うん、まったく自炊はしないですね。家で食べるときも出前取ったりすることがほとんどです」

「作ったほうが美味しいですよ。なにより経済的だし。いいこと尽くしなのに」

「絵梨香さんは料理が上手そうですよね。なんというか、丁寧に作っていそうです」

「そんなことないですよ。土日にまとめて作って冷凍して、平日はレンジで温めるだけです」

「そうなんですか? 今度、絵梨香さんの料理、食べてみたいな」

「……大したものでなくてもいいのなら、頑張ってみます」絵梨香は少し恥ずかしそうに答えたが、忙しいなかでも地に足をつけて生活している堅実さは自分にはないもので、佑都はそんな絵梨香に惹かれているのだった。

 

佑都から絵梨香に告白をするのに、それほど時間は必要なかった。絵梨香のほうも佑都が踏み出すのを待っていてくれていたようで、2人は付き合い始めた。

お互いに年齢のこともあり、結婚を意識しているところも似ていたし、よく言えば大胆、悪く言えば、ずぼらな佑都の性格と絵梨香の堅実で丁寧な性格はお互いの不足を補うようでもあった。

2人はタイミングを見て、同棲を始めた。お互いに結婚を考えているからこそ、迷いはなかった。佑都は近いうちに両親にもいい報告ができるだろうと思った。

●35歳で婚活を始めた佑都は、自治体主催の婚活パーティで絵梨香と出会い、結婚を意識した交際をスタートさせる。順調に距離を縮め、やがて同棲を始めることになるが…… 後編【「根本的に価値観が合ってない」結婚目前の同棲が破綻…あぶり出された決定的な違和感とは?】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません