将来の不安が背中を押す

正月の帰省から戻ると、佑都の日常はすぐに元通りになった。

佑都はIT商社に勤めていて、法人営業を主な業務にしていた。仕事は忙しく、取引先を回って帰りが遅くなれば、夕食は外で済ませることも多かった。

両親と話した結婚の話題などあっという間に忘れ去っていた佑都だったが、決算の3月を無事に乗り越えたころ、仲良くしていた会社の後輩から結婚の報告を受けた。佑都は笑って「おめでとう」と声をかけたが、そのときに正月に宏英から言われた、「いつまでも独り身ってわけにもいかないだろ」という言葉が蘇ってきた。

後輩の結婚が羨ましいと思ったわけではない。ただ漠然と、将来のことなどを不安に思ったのだ。

その日の夜、佑都はこっそりとマッチングアプリをインストールした。

 

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これまでは忙しいことを言い訳に積極的な婚活を遠ざけていた佑都だが、始めてみると仕事の忙しさは関係なく、むしろ空いた時間にメッセージのやり取りをすればいい分、気楽ですらあった。

佑都はアプリで知り合った何人かとデートをした。休日には婚活パーティーや街コンのようなイベントにも参加してみた。山北絵梨香という同い年の女性と出会ったのは、自治体が主催する小さな婚活パーティだった。

パーティーに参加していた絵梨香は派手な服装ではなかったが、淡い色のブラウスに細いネックレスを合わせた姿は、生活感があり落ち着いた雰囲気だった。特に柔らかい声が印象的で、口に手を添えながら上品に笑う姿には、図らずもドキリとさせられた。佑都は初対面なのに居心地の良さを感じ、自然と話が弾んだ。

連絡先を聞くときは柄にもなく緊張したりもしたが、絵梨香も佑都との会話を楽しんでくれていたようで快く連絡先を交換してくれた。