2.2株式市場の急落を回避することの是非大幅上昇日と大幅下落日の近接

続いて、大幅上昇日と大幅下落日の関係を確認する。過去30年のS&P500について、各年の「最も上昇した日」「最も下落した日」およびその近接状況を整理した(図表2-1,2-2)。

[図表2-1]過去30年のS&P500における年間最大上昇日と最大下落日の近接状況(要約)

 

[図表2-2]過去30年のS&P500における年間最大上昇日と最大下落日の近接状況

 

出所:WSJ MARKETS “S&P500 Historical Prices” を基に筆者作成。
注 1:「前日比」「何日前/後か」は営業日ベース(暦日ではない)。
注 2:上昇率/下落率は前営業日終値との差分。

図表2-1,2-2で重要なのは、最も上昇した日(BestDays)が、大幅下落の前後、あるいは下落局面の最中に出現しやすい点である。

「暴落が怖いからいったん売る」「底を確認してから買う」といった行動は、結果として大幅上昇局面を取り逃す確率を高め得る。短期の値動きを完全に回避することは難しく、長期の資産形成においては、タイミングを計ろうとする行為そのものがリターン低下の要因となり得る点に留意が必要である。

2.3史上最高値からの投資(いわゆる「高値掴み」)は不利か

次に、いわゆる「高値掴み」が長期リターンに不利に働くのかを確認する。J.P.MorganAssetManagement"GuidetotheMarkets"掲載データでは、S&P500が史上最高値を更新しているタイミングで投資した場合と、タイミングを問わず投資開始した場合の一定期間後のリターンが比較されている(図表3)。図表3における「史上最高値のタイミングで投資」とは、S&P500がそれまでの過去最高値を更新した日のみを投資の起点として抽出し、各起点日から一定期間後の将来リターンを平均したものである。「タイミング問わず投資」とは、すべての取引日を起点として投資した場合における、各起点日から一定期間後の将来リターンを平均したものである。

[図表3]S&P500平均累積リターンの比較

 

出所:J.P.MorganAssetManagement"GuidetotheMarkets"(1Q2026)より引用。対象期間:1988/1/1~2025/12/31。グラフは筆者作成。
注:累積リターンはS&P500トータルリターン(配当込み)。

図表3によれば、史上最高値で投資を開始した場合であっても、中長期のリターンは「タイミング不問」で投資を開始した場合と大きな差はなく、期間によってはわずかに上回っている。例えば、3年後のリターンは+46%(史上最高値で開始)に対して+41%(タイミング不問)、5年後は+82%(史上最高値で開始)に対して+76%(タイミング不問)と整理されている。

この結果は、「高値掴み」を過度に恐れて投資開始を先送りすることが、かえって機会損失につながり得ることを示唆している。もっとも、投資開始時点の価格水準が心理的な障壁となる場合には、一括投資にこだわるのではなく、時間分散(積立投資)を活用しながら市場に入ることも現実的な選択肢となり得る。