預金はあくまで「結果」であり仕組みを作ることこそが重要

投信残高の増加は前述の信託報酬の増加と直結し、ビジネスモデルという観点で見れば、FFGはストックビジネスを確立している。「ストック収益は市場環境や金利動向の影響を受けにくく、収益基盤の安定化に寄与しています」と古澤氏も強調する。今や投信による収益の5割以上を信託報酬が占め、「人件費、システム費などを含めても、預り資産ビジネスの採算はプラスに転じ、さらに収益を伸ばし続けている」という。このストック収益の拡大によって、短期の収益化が見込めない現役世代への施策、さらには人材育成やデジタル化といった中長期を見据えた投資もしやすくなるなど波及効果は大きい。

FFGにおいては、それだけ預り資産ビジネスの重要度が増しているわけだが、一方で地方銀行全体に目を向けると、「金利のある世界」へと回帰する中で預金獲得に注力し、一部では預り資産ビジネスを軽視する傾向すら見られるようになっている。しかし古澤氏は、「預金単体に依存したビジネスモデルには限界がある」と、そうした潮流に異を唱える。「特に金利条件によって資金が移動しやすい現状では、預金だけでお客さまと安定的な関係は築けません」

確かに預金の獲得のため、高い金利を掲げたキャンペーンなどを実施する銀行は少なくない。もちろん一定の効果はあるものの、金利で獲得した預金は、さらに高い金利を求めて流出しやすいのも事実。その点、「私たちは闇雲に金利を上乗せして預金を獲得することを目的とするのではなく、あくまでお客さまに喜んでいただき、選んでもらえる銀行となることを目指してきました」と竹内氏。実際に福岡銀行の預金は着実に増加しているそうで、「いわば自然と預金が集まる仕組みを作ってきた」という。

顧客視点で考えれば、「インフレ下で資産の目減りをどう防ぐかという課題に、預金だけで対応するのが難しいのは明らかです」と古澤氏も指摘する。「だからこそ、預金の増加はあくまで『結果』だと捉えるようにしています。お客さまの資産形成やライフプランに寄り添い、お客さまの資産全体と長期的な信頼関係を構築する中で、預金が自然と集まってくる状態を作ることが肝心だと考えているのです」。つまり、預り資産ビジネスは単なる収益源にとどまらず、総合取引の起点であり、顧客との関係構築の中核を担うものでもある。それが金利に依存しない、いわゆる「粘着性のある預金」の積み上げにもつながるというわけだ。

ゴールベースがデフォルトとなりデータの活用でさらなる進化も

ここまで見てきた「投信のパレット」の成功にとどまらず、FFGが次のステージとして目指してきたのが「ゴールベース型トータルライフコンサルティング」。その核と言えるのが、2024年に導入した「FFGのライフキャンバス」だ。これは顧客の目的やゴール、ライフプランなどに基づいてシミュレーションを行ったうえで、資産を「かりる」「ふやしてそなえる」「必要な保障や仕組みでそなえる・のこす」に色分けし、最適な置き場所を提案できるツールのことである。

その置き場所が「ふやしてそなえる」であれば、「投信のパレット」や積立投資を中心とする資産形成を、「かりる」であれば各種ローンを、「必要な保障や仕組みでそなえる・のこす」であれば、生命保険や相続対策・贈与などを提案する。さらに保険の提案に当たっては、3つの質問に答えるだけで必要な保障がイメージとして表示される「i-navi」と呼ばれるツールもある。

「FFGのライフキャンバス」に「投信のパレット」「i-navi」を組み合わせることで、資産形成に保険やローンなども加えた総合的なコンサルティングが可能となったわけだ。しかも、顧客との伴走は、この「FFGのライフキャンバス」を用いて途中経過を報告し、定期的な見直しなども行っていく。それがFFGの目指す「ゴールベース型トータルライフコンサルティング」の姿であり、「販売現場への浸透は着実に進んでいます」と古澤氏は手応えを語る。「従来の商品提案中心の営業から、お客さまの人生設計や資産全体を俯瞰した提案へとシフトすることで、提案の質が向上し、対話の深さも大きく変わってきました。現場からは『提案に自信が持てるようになった』『お客さまとの関係が長期化している』といった声も聞こえてきています」

これまで難しかった他社の預り資産をヒアリングしやすくなるという利点もあり、顧客にとっても自身の資産が整理され、将来設計を立てやすくなるというメリットがある。顧客の納得感も高まるため、結果的に「投信のパレット」の約定単価も上昇するといった好循環も生まれているという。

さらに今年度中には、SFA(営業支援システム)とこの提案プロセスを自動連携させる予定。それは「ゴールベース型トータルライフコンサルティング」が、デフォルトになることを意味する。この移行を担っているのが谷口氏で、「ゴールベースのプロセスを経なければ約定できなくなるわけですから、かなり思い切った変更と言っていいでしょう」と話す。「FFGのライフキャンバス」に基づく多様な提案から、約定、フォローまでをシームレスにつなげられる機能改善も行われる予定で、蓄積された顧客のデータを分析、活用し、新たなソリューション提案につなげる構想もあるという。

「これまではさまざまなシステムごとに入力されたデータが散在していたため、必ずしもうまく活用できていなかったのは否めません。今回のSFAとの自動連携はデータの集約という側面もあるわけで、その集約されたデータをAIも活用しながら分析し、最適な提案を担当者にサジェストするような仕組みの構築を、今まさに進めているところです」(谷口氏)。すでに顧客との会話を録音、テキスト化し、データとして蓄積するシステムは稼働済みであり、FFGの「ゴールベース型トータルライフコンサルティング」は、さらなる進化を遂げることになるのだろう。