「分かりやすさ」選好が遠のいていく未来

AIのさらなる進展により、消費者側にはエージェントが付き、提供側ともAI同士がやり取りする世界が到来すると予想されている。

資産運用も例外ではない。

各人に“AI版CIO(最高投資責任者)”のような存在が付くことで、これまで機関投資家しか実行できなかったような高度な分析やポートフォリオ構築が、個人レベルでも可能になっていくだろう。

そうなれば、個人と機関投資家の間に存在していた情報量、分析手段、商品アクセスの差は、徐々に縮小していくはずだ。

もちろん、私はオールカントリーそのものがなくなると言いたいわけではない。

何十年も前から、「アクティブ運用 vs パッシブ運用」の議論や、「市場は効率的である」という考え方は存在してきた。そして、世界株式市場全体を代表する低コストなインデックスへ長期投資することの有用性は、今後も変わらないだろう。

実際、オールカントリーは“人間時代”において、多面的に見て極めて優れた金融商品だった。

シンプルで、理解しやすく、説明しやすく、多くの個人投資家にとって実行可能だったからである。

しかしAI時代には、「分かりやすさ」という要素の重要性が、投資判断において徐々に低下していく可能性が高い。

その結果、「とりあえずオールカントリーだけ買っておけばよい」という極めて単純化された資産運用の思想は、次第に後退していくだろう。

そしてその先には、世界中の個人投資家が、より分散され、より複雑で、より機関投資家的なポートフォリオへ向かっていく未来がある。

その時、「オールカントリー“一択”」という、人間時代の資産運用は、静かに終わりを迎えていることだろう。