AIは本当に“オールカントリー100%”を推奨するのか?

さて、もしAIに例えば、「老後まで30年間運用したい」として、希望条件を下記のように、

・「下落可能性を極力抑えたい」
・「インフレに強い資産配分にしたい」
・「可能なら安定したキャッシュフローもほしい」

などと依頼した場合、AIは、

「オールカントリー100%です」

と答えるだろうか。

おそらく、そうはならないだろう。

なぜなら、こうしたごく一般的な資産運用上の要請に応えるためには、そもそも株式100%のポートフォリオ自体が最適解とは限らないからだ。

株式は長期的には優れた資産である一方、下落局面では他の資産に比べ大幅な価格下落が起こり得る。また、安定したキャッシュフローの確保という観点では、他の資産クラスの方が適している場合もある。

さらにいえば、株式への投資手段も、必ずしも「時価総額加重型の全世界株インデックス」が唯一の正解とは限らない。

本当にリスク分散やキャッシュフロー安定性、インフレ耐性まで考慮するなら、

・債券
・プライベートクレジット
・インフラ
・不動産
・実物資産
・その他オルタナティブ資産

などを組み合わせたポートフォリオの方が、むしろ合理的なケースも多いはずだ。
つまりAIが本格的に“投資の最適化”を始めれば始めるほど、「オールカントリー“一択”」という極めてシンプルな結論からは離れていく可能性が高い。

世界最高峰の投資家は、実際どうしているか

現在、長期投資を前提とした機関投資家の中で、世界でも最も高度な運用を行っている存在の一つが、米国の大学基金(Endowment)だという見方がある。

実際、イエール大学やハーバード大学などの大学基金は、運用責任者に数億円規模の報酬を支払い、外部コンサルティングファームなどの知見も取り入れながら、高度に組織化された運用を行っている。

そして重要なのは、こうした世界最高峰の投資家たちが、当然ながら「オールカントリー“一択”」で運用しているわけではない、という事実である。

実際のハーバード基金の資産配分を見ると、上場株式の比率は限定的であり、大きな割合をプライベートエクイティやヘッジファンドなどのオルタナティブ投資が占めている。

ハーバード大学基金 資産配分(2025年6月末時点)

ハーバード大学基金 資産配分(2025年6月末時点)

出所:ハーバード公表資料に基づき筆者作成
 

つまり彼らは、単に「上場株式を長期保有する」のではなく、投資先同士の相関、インフレ耐性、最大損失幅(ドローダウン)、景気局面ごとの耐性などを総合的に考慮し、高度に分散されたポートフォリオを構築しているのである。

つまり、世界最高峰の投資家たちはとっくに「単純な株式インデックス投資の先」に進んでいる。