なぜ「オールカントリー“一択”」がここまで広がったのか

ここ数年、NISAの普及とともに、「オールカントリー(全世界株式インデックス)」の積立投資は、日本の個人向け長期資産運用において完全な市民権を得た。

オールカントリーが長期投資の対象として優れた商品であることは間違いない。

・運用コストが低い
・世界中の株式に広く分散されている
・シンプルで分かりやすい
・長期積立との相性が良い
・NISA制度とも親和性が高い

特に初めて本格的な資産運用を始める多くの日本人にとって、非常に合理性の高い選択肢だった。

ただ一方で、オールカントリーがここまで社会現象化した理由は、それが必ずしも万人にとって“最も優れた投資”だったからではないようにも思う。

むしろ大きかったのは、「分かりやすさ」ではないだろうか。

「全世界に分散」「低コスト」「これ一本でOK」

というメッセージは極めてシンプルで、多くの人に理解されやすい。

SNSとの相性も良く、「あまり難しいことを考えなくてもよい資産運用」として急速に広がっていった。

つまりオールカントリーは、“人間にとって理解しやすい”という点で極めて優秀だったのである。

もちろんこれは決して軽視すべきことではない。資産運用において、「理解できる」ということ自体は大きな価値だ。

しかし、もしAIが個人の資産運用を本格的に補助・代理するようになれば、この前提そのものが変わり始める可能性がある。

AIは“分かりやすさ”を必要としない

人間が単独で投資判断を行う場合には、多くの制約がある。

個々人の金融リテラシーには差があり、資産運用に割ける時間も限られている。また、人間はリスクや将来リターンを必ずしも合理的に判断するわけではなく、感覚や心理に大きく左右される傾向がある。

しかしAIは、人間とは根本的に異なる。

AIは、

・数多く存在する金融商品の比較
・資産間の相関分析
・ドローダウン(最大損失幅)分析
・キャッシュフロー分析
・詳しい契約条件の確認
・税務面の考慮

などを同時並行的に処理することができる。

AIにとっては、「分かりやすいかどうか」は本質的な問題ではない。

重要なのは、その投資が本当に合理的かどうかである。

AIが個人投資家の資産運用を本格的に補助・代理するようになれば、「理解しやすい商品」が選ばれる時代から、「純粋にリスク・リターン特性に優れた商品」が選ばれる時代へと変わっていく可能性がある。