これまで個人には不可能だった

もちろん、ここで私は、市民権を得た「オールカントリー積立投資」を否定したいわけではない。

前述のとおり、それは現実的な制約の中では極めて合理的な選択肢だったと考えている。

そもそも個人投資家には、大学基金のような商品アクセスも、情報もない。

プライベートアセットやオルタナティブ投資を検討しようとしても、

・投資機会そのものにアクセスできない
・英文資料を詳しく読む必要がある
・契約条件が複雑
・個人レベルでデューデリジェンスを行うのは現実的ではない

など、多くの障壁が存在していた。

つまりこれまで個人投資家には、機関投資家のように膨大な情報を比較分析し、高度なポートフォリオ構築を実行する環境そのものが存在しなかった。

だからこそ、「シンプルなインデックス投資」が、多くの人にとって最も現実的な解だったのは十分に理解できる。

AIが個人を“機関投資家化”する

しかしAIエージェントが普及すると、各人に超高度な資産運用アドバイザー、あるいはCIO(投資責任者)が付くような状況になる可能性がある。

AIは、個人の家計状況やリスク許容度、保有資産、将来支出などを踏まえながら、単なる商品選択ではなく、ポートフォリオ全体の最適化を行うようになるだろう。

そこでは、個々の商品が分かりやすいかどうかよりも、資産全体としてどのようなリスクを取り、どのようなリターンを期待し、どのように下落やインフレに備えるかが重視されるはずだ。

もちろん、その時々の流動性や最低投資金額、商品アクセスなど現実的な制約も考慮しながら最適化を行うはずだ。

しかし、そのころには個人向け金融市場そのものも変化している可能性が高い。

これまで主に機関投資家しかアクセスできなかったプライベートアセットなども、個人向けにより広く提供されるようになるだろう。

実際、世界では既にその流れが始まっている。

つまりAI時代とは、単に「投資アドバイスが便利に使える時代」ではない。

個人投資家が、“機関投資家型の運用”へ近づいていく時代なのである。