<前編のあらすじ>

長男・博樹の保育園入園に合わせて妻・ゆかりが職場復帰し、泰司たち一家の共働き生活が始まった。慌ただしい朝の支度や家事育児の分担に対する温度差が早くも表面化する。

2週間が経ち、ゆかりは仕事と育児の両立に疲弊していく。クローゼットには見慣れない新しい服が増え、コンビニスイーツを買って帰る日が続くようになる。泰司はやや気になりつつも、口を出さずにいた。

ゴールデンウィーク明け、疲労がピークに達するなか、泰司は家族の将来のために貯めていた口座から、何度も細かいお金が引き出されていることに気づく。

●前編【「私が全部やらないといけないってこと?」職場復帰した妻の冷たい視線…夫が知らない"家庭の地獄"

ゴミ箱の中の不審な封筒

気づいたのは給料が入ってから数日後のことだった。

晩酌のつまみにしているミックスナッツの空袋を捨てようとキッチンのゴミ箱を開けたとき、くしゃくしゃにして捨てられているいくつもの緑の封筒が目に入った。

封筒は、貯蓄用に使っている銀行のものだった。普段の生活費をやりくりしている別の銀行の口座と違い、めったにお金を下ろしたりすることがない分、丸められたいくつもの封筒はどうにも不自然に感じられた。

喉に引っ掛かった魚の小骨のような嫌な感触を放置できず、泰司はゆかりがシャワーを浴びている間に寝室のタンスにしまってある通帳を引っ張り出した。しかし通帳にはこれといった記帳がなく、半年以上前の記帳が最後になっていた。家計の管理はゆかりに任せてあったから、キャッシュカードはゆかりが持っている。泰司は通帳をそっとカバンの奥にしまい込み、翌日の昼休みに銀行へ向かうことにした。

ATMから戻ってきた通帳を確認した瞬間、落胆のため息が出た。口座から細かいお金が数度にわたって引き出されていた。

もちろんお金を引き出せるのはキャッシュカードを持っているゆかりしかいない。

泰司は怒りと悲しみを覚えた。お金のことで揉めるような夫婦にはなりたくないと思ってきた。今まで細かいいざこざはいくらでもあったが、お金のことでケンカしたことはなかった。正直、このまま気づかないふりをすることも考えた。しかし将来のことを考えれば、そういうわけにもいかなかった。