絵美が仕掛けた「ある提案」

その翌日、すぐに自分の部屋に引っ込んでしまうみやびを待ち構えるように、絵美は玄関で出迎えた。

「おかえりなさい。ねえ、今日の夜なんだけどパパと3人で、外でお食事しない? みやびちゃんが好きなイタリアンのお店、パパが予約してくれたって」

絵美の提案にみやびは少し間をあけて答えた。

「……別にいいよ」

「それじゃあ時間になったらお父さんの仕事場にお迎え行こうか」

みやびはうなずいて、部屋にそそくさと戻っていった。

6時を過ぎてから絵美はみやびと2人で電車に乗って事務所に向かった。

約束の時間よりも少し早めに到着すると、ガラス張りの1階から事務所の様子がよく見えた。宏臣は建築模型を挟みながら、スタッフと何かを真剣に話し込んでいる。

みやびは普段見ることのない父の姿に目を奪われているように、真剣に見つめていた。

「……みやびちゃん、パパは毎日こうやって頑張ってお仕事してるんだよ」

「……初めて見た」

「かっこいいよね」

「うん」

「パパが何で頑張ってるか知ってる?」

「ううん」

「頑張ってる理由はきっといっぱいあるけどね、1番の理由はみやびちゃんのためにお金を稼ぎたいからなんだよ」

「…………」

「だからね、パパが頑張って稼いだお金は大切だからさ、何となく使うんじゃなくて、自分でちゃんと考えて使えるほうがかっこいいと思うんだ。みやびちゃんはせっかく素敵な人なんだもん。そういうことを考えられると思ったから、ついあのとき口うるさいこと言っちゃったの。ごめんね」

「いいよ、別に怒ってないから」