瑞穂の行動に誠也は凍りつく

翌日、誠也と瑞穂はいつも通りに仕事に向かったが、瑞穂は普段とは見違えるほどウキウキとした面持ちだった。

エイプリルフールの嘘は午後になったらばらすという、どこかで見聞きしたセオリーを守り、誠也は仕事が終わって2人で晩ご飯を食べているときにでもネタばらしをしようと思っていた。

しかし誠也が仕事から帰宅しても瑞穂の姿はなく、帰ってきたのは21時を過ぎたころだった。

「ごめんね。遅くなっちゃった。ご飯はどうした?」

瑞穂は両手に大きな紙袋を持っていた。しかも服に疎い誠也でも知っているようなブランドのロゴが袋にはあしらわれている。

「……いやとりあえず帰ってくるまで待っておこうと思ったから食べてないけど」

あっけにとられながら誠也は聞かれたことに答えた。すると誠也の視線に気付いたのか瑞穂は頬を緩ませた。

「ごめん、先に買っちゃった。前からほしいと思ってた服とか靴とかあって我慢できなくてさ」

「……それ、いくらくらいしたの?」

「全部で15万くらいかな」

額を聞いて誠也は動揺した。瑞穂は誠也の様子に気付かず、笑顔で声をかけてきた。

「晩ご飯どうする? お寿司とか頼んじゃってもいいと思うよ。今日はパーッとお祝いをしようよ」

パーッと好きなことに使おうと昨晩話したことを瑞穂はさっそく実践していた。

瑞穂は携帯を操作しながらリビングへと入っていった。このまま寿司まで頼まれたら大変なことになると思って誠也は止めようと思った。

「なあ、寿司なんだけどさ……」

リビングで誠也は声をかけたが、瑞穂はそれにかぶせるように質問をしてきた。

「それとゴールデンウィークだけど、今のうちにどこに行くか決めておいたほうがいいよね。人気のところなんか今から予約取らないとマズいからさ。私たち、新婚旅行でハワイに行ったじゃない? あのときにまたいつか来ようって約束したの覚えてる?」

瑞穂に聞かれて誠也はうなずくしかできなかった。言ったことだけじゃなく、そのときに見た景色や瑞穂の顔もしっかりと記憶していた。

「でもあれからなかなか行けてなかったから2人でまた行こうよ。シーズンじゃないけど別に海に入らなくても楽しめると思うし」

あまりに嬉々として話す瑞穂に、すべて嘘だったと誠也は切り出すきっかけを完全に見失っていた。

●エイプリルフールに「宝くじ1000万円当選」という嘘をついた誠也。軽い冗談のつもりが、翌日、瑞穂が15万円のブランド品を買って帰宅し、さらにはハワイ旅行まで計画し始めてしまう。ネタばらしのタイミングを完全に見失った誠也は…… 後編【「30過ぎてそんなことも分からないの!」高額当選に歓喜した妻が一転…夫が土下座で打ち明けたこと】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。