<前編のあらすじ>
広告代理店で企画制作部に所属する結弦は、上司の青木から10億規模の大型案件の主担当に推薦すると内々に告げられる。子どもが生まれたばかりの結弦にとって、出世と家族を支える収入の両面で大きなチャンスだった。
その日は会社の花見があったが、結弦は家族との時間を優先して不参加を選ぶ。帰宅後、妻の香織に大型案件の話を伝え、家族最優先の姿勢は変わらないと約束した。
2週間後、案件の主担当が発表されるが、呼ばれたのは結弦ではなく後輩の岡田だった。自分の名前が出ないことに動揺した結弦は、何が起きたのかまったく理解できないまま立ち尽くした。
●前編【「お前に任せる」“10億円プロジェクト”を口約束された喜びも束の間…後日発覚した上司の「あり得ない裏切り」】
納得できない結弦の怒り
朝礼が終わってとりあえずデスクには戻ったものの、結弦は意味が分からないままだった。
実際に青木からは仕事を任せると言ってもらえたし、推薦もしておくと言ってくれた。なのに実際に主担当を任されたのは後輩の岡田だった。
岡田は社交的で誰からも好かれるし仕事に対しても熱量のある人間だが、こんな大型プロジェクトを任せるにはまだ実績が心もとない。少なくとも実績でいえば自分のほうがはるかに上だ。それなのに岡田が、よりにもよって自分より後輩の岡田が任されたことが納得できなかった。
だから午前の仕事を終えて昼休憩に入ったとき、すかさず結弦は青木に声をかけた。
「部長、ちょっとお聞きしたいことがあります」
青木は予期していたのか少しだけ目線を伏せた。
「ちょっと別のところで話そう」
結弦たちは会議室に向かった。青木がオフィスとつながるガラス窓のブラインドを下げ、結弦は口を開いた。
「ノヴェラパークモールの案件なんですが、俺が担当じゃないんですか? 部長は俺に任せてくれると言ってくれたじゃないですか?」
「まあ、そうだよな。すまない。申し訳ないが岡田に任せることになったんだ。本当に悪い」
「……もう決定しているんですよね? だとしても納得のいく説明をお願いします。どうして岡田なんですか?」
問い詰められた青木はばつが悪い顔で答えた。
「……少し前に花見があっただろ? 実はそこで、俺がうっかりみんなにプロジェクトの話をしてしまったんだよ」
青木は頭を掻いた。
