妻が指摘した"不公平"の正体
「……例のプロジェクト、結局、別の担当者になったよ」
任されると話してしまった以上、香織にだって報告しないわけにはいかなかった。香織は少し固まったあと、結弦を気遣って生まれる落胆を隠すように小さく微笑んだ。
「……え? どうして?」
「部長が飲み会のときに後輩に話したんだって。そしたらそいつがやりたいって立候補して、その熱意にほだされたんだと」
ほとんど愚痴のように言うと、香織は顔をしかめた。
「……それって不公平だよね」
「……え?」
「だってその飲み会、任意だったんでしょ? なら業務とは別じゃない? それなのに、そんな大事な意思決定をそんな場でしちゃうなんておかしいよ」
香織の整然とした言葉は、結弦が理解はしつつも納得しきれていなかった胸のうちの不満に明確なかたちを与えてくれるようなものだった。
「そういうのが常態化するとさ、育休とか介護休暇とか取りづらくなったり、用事があるのに飲み会を断りにくくなったりするんだよね」
「確かにな……」
結弦はうなずきながら、なんとなく自分のすべきことがわかったような気がした。
