会社の会議室で結弦はスクリーンの前に立ち、上司や営業担当の人間に向けてプレゼンをしていた。

「昨年の大型連休向けの施策自体は問題なかったと思っています。ですが購買への導線が弱くイベントに参加するだけで帰るお客様が多くいました。今回、われわれはそこを改善する企画を考えました」

この広告代理店に入社し、企画制作部に配属されてから7年が経った。最初はプレゼンで使うための資料集めにすら四苦八苦していた結弦も、今では後輩たちの意見や考えをとりまとめながら顧客のニーズをくみ取り、企画を主導して立ち上げられるくらいには成長していた。

出世への足がかりとなる案件

実際に今回のプレゼンもすんなりと受け入れてもらって会議は無事に終了となった。他の担当者たちがそそくさと帰り、結弦が資料をまとめて部署に帰ろうとすると直属の上司でもある青木から声をかけられた。

「お疲れさん。よくまとまっていていいプレゼンだったぞ」

「ありがとうございます」

青木から評価されるということは出世に大きく関わってくる。表情にこそ出さなかったが、結弦は内心でガッツポーズをしていた。

青木は昨年、競合の大手広告代理店からヘッドハンティングされてきた人物で企画にも営業にも強いと社内で一目置かれていた。そんな青木から評価をしてもらえたことも、結弦がうれしく感じたことの一因でもあった。

「そういえば今、営業部がノヴェラパークモールとの商談をやってるってのは知ってたか?」

「いえ、初耳です」

ノヴェラパークモールは郊外に位置する大型ショッピングモールで、結弦も家族で何度か行ったことがあった。

「あそこが来年の10周年に向けて大規模リニューアルをするんだけど、その話がうちに来てるんだ。10億は動く案件だぞ」

「えっ⁉ そうなんですか⁉」

結弦は会社の規模を考えると、これまでにないほどの大型プロジェクトであることが分かった。

「もし決まったらお前に任せるからな」

「えっ⁉」

「もちろん本決まりじゃないんだけどな、俺はお前を推薦するつもりだからそのつもりでいてくれ。俺は坂下に期待してるんだからよ」

青木の言葉に、結弦はうれしさをかみ殺してうなずいた。