「ちょっとよくないことをしてるみたいだよ」
結局、吉田加奈子に押し切られる形で、相澤美奈はPTAを続けることになった。
就職してもいきなり忙しくなるわけではなかったし、登下校の見守りくらいなら子どものためにもやった方がいいとは思った。なので、嫌々ではあったものの、2ヶ月ほど我慢してPTA活動を続けていた。
ただ、吉田加奈子の対応には納得がいかなかったし、仕事もだんだん忙しくなるので、なんとか早めにPTAを辞めたかった。それで、相澤美奈は近所に住むママ友の村井千鶴をカフェに呼び出し、経緯を打ちあけて相談した。
「実は、2ヶ月くらい前に、吉田さんにPTAを辞めたいって伝えたの。そしたら、吉田さんが急に怖い顔になって『勝手にPTAを辞めないで!』って、怒って反対してきたの……」
「え、そうだったんだ。でも、PTA活動なんて、やるかどうかは個人の自由なんじゃないの?」
村井千鶴が同意してくれたので、相澤美奈は気持ちが少し楽になった気がした。
「私もそう思った。でも、吉田さんて身長も高いし、体も声も大きいでしょ。それが大声で怒るから、怖くて言い返せなくなっちゃって……」
「ああ、確かに、あの人、怒ると怖そうだよね」
「うん。でさ、それだけじゃなくて、『集団行動を乱してる』とか、『相澤さんは常識がない』って、ずっとネチネチ言ってくるんだよ……」
「ああ、吉田さんて、ちょっと体育会系な感じあるもんね」
「そうなの。でもね、やっぱり私納得できなくてさ。どうにかしてPTAを辞めたいんだけど、どうすればいいかな……」
相澤美奈はそう言うと悲痛な表情でうつむいた。
「そうだったんだ。吉田さんには本当に困るよね。実はつい先週も同じような相談を受けたばっかりだし」
「え、誰から?」
「小林さん」
「ああ、小林さんもPTAを辞めたいんだ……」
相澤美奈は、小林なつみという少し年下のママ友の顔を思いだした。
「うん。でも、やっぱり吉田さんからかなり無理やりな感じで引き留められたみたい」
村井千鶴はため息をついた。
「吉田さんて、なんでも自分勝手で強引に進めちゃうからさ、みんな裏では嫌ってるみたいよ」
「やっぱりそうだったんだ」
相澤美奈は吉田加奈子の険しい表情を思い出した。人に対してああいう厳しい態度ばかり取っていたら、みんなから嫌われても仕方がないと思った。
「ここだけの話、ちょっと悪い噂もあるみたい」
「悪い噂?」
美奈が聞き返すと、村井千鶴は真剣な顔で言った。
「吉田さんてさ、ちょっとよくないことをしてるみたいだよ」
●PTAを牛耳っていた吉田さんの裏の顔とは……。後編:【「PTA会費の計算が合わないらしくて…」体育会系48歳の「お局悪女」が支配するPTAで問題になっていた「お金の不祥事」】にて詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
