人的資本経営とウェルビーイング施策の土台となる経済的安全性

人的資本経営とは、従業員のスキル・知識・能力を「価値を生み出す資本」と捉え、企業価値の向上につなげる考え方です。その実現には、企業の方向性に共感し自発的に力を発揮する「エンゲージメント」の向上が不可欠であり、前提として従業員の生活・環境の健全さ、すなわち「ウェルビーイング」があります。

WTWでは従業員のウェルビーイングを身体的、精神的、経済的、社会的という4つの側面から捉えています(図1)。

図1:人的資本経営を実現させるウェルビーイングの4要素

出所:WTW-タワーズワトソン作成

中でも経済的安全性はウェルビーイング全体を支える基盤となります。経済的な問題はストレスになりやすく、人生100年時代という長期的なライフキャリアを考える上でも重要なテーマです。そのため企業には従業員の生活基盤を支える福利厚生制度を通したウェルビーイング施策を検討することが求められます。

WTWが隔年で実施している調査では、福利厚生コストの上昇への懸念が年々高まっており、全世界5,500社以上が参加した2023年の調査では最大の課題と認識されていることが分かりました。「人材は資本」とはいえ、現実には無制限に福利厚生コストを投じられる状況ではないことがうかがえます。

こうした流れを受け、多くの企業が福利厚生費の再調整・再配分に動いており、全世界で57%、日本でも45%の企業が福利厚生費を再調整・再配分する予定だと回答しました。原資が限られる中、最も従業員の価値向上につながる福利厚生とは何か、効果を最大化する方向へ見直しが進んでいます。

人材をコストではなく投資と捉えるにあたり、リターンを意識することは当然です。では、そのために企業はどのような施策を取るべきでしょうか。その有力な選択肢としてファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)への取り組みが挙げられます。その理由を調査結果を基に見ていきましょう。