今回は、「有事のドル買いと日本の物価」について解説します(スライド1)。

 

「有事のドル買い」の真偽と投機筋のポジション

はじめに、昨年以降のドルの値動きです。総じてドル安が進みましたが、何度か持ち直す場面で「100」前後が天井となってきました。ただ、今週は地政学リスクの台頭を踏まえたドル買いを支えに、99前後まで再び持ち直しつつあります。こうしたドル買いについて、「有事のドル買い」とする見方が散見されています(スライド2)。

 

この有事のドル買いとは何でしょうか。もちろん基軸通貨であるドルを持っておくことが安心との見方やその連想からドルが選好されやすい側面はあるでしょう。もう一つ考えられるのが、アメリカの貿易収支の改善です。アメリカは原油こそ純輸入国ですが、石油及び石油製品全体では純輸出国です。従って、原油をはじめとする関連市況が上昇するとアメリカの貿易収支が改善し、これがドル高に作用すると考えられます。また、この裏返しでもありますが、輸入国側では同じ数量の資源を輸入する場合も、それまでと比べてより多くのドル買いが必要となり、これもドルを押し上げることになります(スライド3)。

 

投機筋のドルの先物ポジションをみると2022年の半ばをピークにドルロングの取り崩しが進み、昨年にかけて4年ぶりの水準までドルショートが造成されました。その後、徐々にドルが買い戻された結果、現在は概ね中立です。従って、投機筋がここからドルロングに転じる場合、相応のドル買い余力が残されていると考えられます(スライド4)。