親心と娘が望む自由が正面衝突
美紀子の悪い予感は的中した。
汐里とようやく電話が繋がったのは22時半過ぎ。しかも帰る時間の連絡ではなく、友達の家に泊まるという報告だった。
汐里が帰ってきたのは翌日の昼頃。お酒のにおいなどはしなかったものの、本当のところは美紀子にはわからない。どんどん汐里が悪い方向に進んでいる。どこかで歯止めをかけないと、いつか大きな問題が起こるような気がしていた。
◇
美紀子がノックをして部屋に入ると、汐里は友達と電話をしながら明日からの卒業旅行の準備をしていた。まだ卒業式前だったが、2月に1回と3月に1回の合計2回、卒業旅行に行く贅沢な計画をしているらしい。
美紀子を見た汐里はすぐに友人との電話を切り、めんどくさそうに顔を上げた。
「何?」
「もう夜遅いんだからいつまでも電話してないで早く準備を終わらせなさいよ。ながら作業をしてたら大事なものを忘れたりするからね」
「大丈夫だって」
「電車で行くんでしょ? 乗る時間はちゃんと分かってるの?」
「分かってるって…! いちいち聞いてこないでよ」
汐里は面倒くさそうに返事をして荷造りを再開した。
「ちゃんとGPSを持って行きなさいよ。それを忘れたら大変なことになるわ」
美紀子は机の上に放置されていた見守り用のGPS端末を持っていくように伝えた。けれど汐里は眉間にしわを寄せた。
「は? 嫌に決まってんじゃん」
「……何でよ? 旅行に行くんでしょ? 何かあったら困るから持って行きなさいよ」
「何もないし友達もいるし」
汐里の冷たい言葉に美紀子は怒りを覚えた。
