結論:成長と規律の両立へ
筆者が提案する「不況期以外での債務残高対GDP比の低下」を中心とする新たな財政指標の採用は、日本が長年の課題としてきた「経済成長」と「財政の持続可能性確保」を両立させるための、極めて現実的かつ戦略的なアプローチである。
この指標が中心となることで、政府の政策は「いかに分母であるGDPを増やすか」という成長志向へと明確に転換され、「責任ある積極財政」という理念を、単なるスローガンではなく、「経済成長への投資を通じて、結果として財政の持続可能性を担保する」という実効性のある政策運営へと具体化させることが可能になる。
そこで鍵となるのは、「質の高い成長投資への重点化」と、その効果を担保し、安易な財政膨張を防ぐ「日本版DOGEによるチェック機能の強化」であろう。これにより、日本経済は、緊縮による縮小均衡ではなく、成長を通じた財政の持続可能性担保という、より望ましい道筋を描くことができるだろう。
著者情報
永濱 利廣
ながはま としひろ
第一生命経済研究所首席エコノミスト
早稲田大学理工学部工業経営学科卒、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年より日本経済研究センター出向。2000年より第一生命経済研究所経済調査部、16年4月より現職。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。景気循環学会常務理事、衆議院調査局内閣調査室客員調査員、跡見学園女子大学非常勤講師などを務める。景気循環学会中原奨励賞受賞。「30年ぶり賃上げでも増えなかったロスジェネ賃金~今年の賃上げ効果は中小企業よりロスジェネへの波及が重要~」など、就職氷河期に関する発信を多数行う。著書に『「エブリシング・バブル」リスクの深層 日本経済復活のシナリオ』(共著・講談社現代新書)、『経済危機はいつまで続くか――コロナ・ショックに揺れる世界と日本』(平凡社新書)、『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』(講談社現代新書)など多数。
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