実際に起きた非合理的な出来事

近年で言うと、非合理的な行動で大きく世界が動いたことがあります。それは、2022年2月24日にはじまったロシアによるウクライナ侵攻です。専門家や市場関係者は、経済合理性を考えたら、「ロシアはウクライナには絶対侵攻しない」と予測していました。ところが、多くの予測に反して、両国で戦争が勃発し、世界経済は激動の時代を迎えました。

同じようなことは、2025年の「トランプ関税」にも見られます。多くの有識者や政治家は「まさか、こんな強烈な政策を打ち出してくる」とは思っていませんでした。戦後の国際経済秩序では、「自由貿易による相互利益」を大前提としており、経済合理性から見ても関税強化は不合理となります。でも、実際はどうでしょうか。

想定外の政策が打ち出され、世界経済を大きく揺さぶっています。このように、経済の世界は心理的・社会的な要因に大きく左右されます。

つまり、こうした点が社会科学では「予測不可能でむずかしいところ」になります。そういった心理的な要因や社会的な要因に影響するので、経済の動きを完全に予測することは不可能なのです。ですから、経済の専門家が予測を外しても、大目に見てもらったほうがよいかもしれません。

お金と経済―日本の生産性を高める仕組みと法則―

 

著者名 永濱利廣
発行元 生産性出版
価格2200円(税込)