2025年は、関税引き上げといったトランプ大統領の数々の政策や高市政権による財政出動などにより、金融市場が大きく動きました。

しかし、経済関連のニュースは専門用語が多く、理解しにくいことも少なくないです。

私たちの暮らしとは切っても切り離せない経済を学ぶ際のポイントについて、高市政権の経済ブレーンとしても知られる人気エコノミスト・永濱利廣さんに解説してもらいます。
(全3回の1回)

※本稿は、永濱利廣著『お金と経済―日本の生産性を高める仕組みと法則―』(生産性出版)の一部を抜粋・再編集したものです。

経済が複雑に見えるのはなぜ?

多くの人は「経済は複雑なので、それについて学ぶのはむずかしい」と感じて、つい敬遠してしまいがちです。経済の本を開くと専門用語が並び、すぐに難解な世界だと思ってしまう気持ちは私にもよくわかります。しかし、経済そのものの動きは、日常と切り離せない身近な存在です。誰にとっても身近にあるものなのに、なぜ、経済は複雑に見えてしまうのでしょうか。

身近なもので言うと、「金利」「インフレ」「雇用」「貿易」などと言ったキーワードがすぐに思い浮かぶでしょう。たとえば、「貿易」で言えば、2025年に世界を騒がせてきた「トランプ関税」があります。この内容を見ると、今後、各国間での輸出入は縮小圧力がかかるかもしれません。

つまり、複雑に思えてしまうのは、経済を構成する要素が非常に多くて、これらがさらにお互いに影響を与え合っていて、からみあっているように見えるからです。1つの要因の変化がそのほかの多くの要因に波及効果をもたらして、予測をむずかしくしているということです。

そして、どうにもならないことなのですが、「人間の行動は予測不可能」なのです。これがまさに人間が営む「経済」であり、人間集団の行動、社会構造、社会現象などを研究する「社会科学」の本質なのかもしれません。

理系出身の人はよくわかると思いますが、宇宙、地球にある物質、生命、エネルギーなど、自然現象の法則性を観測しながら明らかにしていく「自然科学」は、基本的に数式や法則に基づいていて、実証可能な対象を扱います。ところが、「社会科学」は人間の行動や心理にも左右されるので、数式や法則で表現するには限界があります。

現在の最先端のマクロ経済学は、いわゆる「経済主体が合理的な行動をとる」という前提で理論が構築されています。しかし、実際には人間は合理的な行動をとるばかりではないので、予測することがむずかしいのです。

みなさんが合理的な行動をすれば、たぶんもっと経済も読みやすくなるのでしょう。しかし、特に株式や為替のマーケットなどは、人々が今後起こりそうなことを先読みしてどんどん動きます。それ自体が合理的な行動とは限らず、多くの個人や企業の意思決定によります。