安全資産として知られる債券。個人の投資家には馴染みはうすいかもしれませんが、実はいくつものメリットを持っています。

債券を知れば、理想の投資スタイルにより近づくことができるかもしれません。

債券投資のメリットや種類について、専門家が解説します。
(全2回の2回)

※本稿は、田渕直也著『教養としての「債券」』(日本実業出版社)の一部を抜粋・再編集したものです。

様々な債券トレーディング戦略

市場は、供給者と最終的な需要者だけで成り立っているわけではありません。というよりも、取引の多くは短期間の売買で値ざやを稼ごうとするトレーディング(短期的売買)で占められています。

長期保有を前提にした投資と、短期的売買を前提にした投機を区別し、前者を善、後者を悪と捉える風潮もありますが、市場が活性化し、様々な情報を織り込んだ形で市場価格が適切に形成されるためには、短期的売買が不可欠です。短期的売買がなければ、市場での取引量は激減し、最終需要者が債券に投資しようとしてもなかなか相手がみつからず、価格の透明性も失われるでしょう。

では、こうした債券の短期的売買はどのように行われているのでしょうか。

実際には様々な戦略がありますが、証券会社や銀行、ヘッジファンドなどが行っているトレーディング業務における戦略を簡単にみていきましょう。

まず、最も単純なものは債券価格が上がると思えば買い、下がると思えば売るというものです。景気後退や中央銀行による金融緩和の思惑が強まれば債券価格は上がり、逆に景気回復や金融引締めの思惑が強まれば債券価格は下がります。そうした動きを先回りして利益を得ようとするのです。非常にシンプルな戦略ですが、実際にこの戦略で安定的に利益を上げることはそれほど簡単なことではありませんし、うまくいかないときにはもちろん損失を被ります。

もう少し複雑な戦略としては、銘柄間の裁定取引(アービトラージ)があります。異なる銘柄の売買を組み合わせて全体的な相場の上げ下げには影響を受けないようにしながら、割高な銘柄を売り割安な銘柄を買うことによって、その割高さや割安さが解消していく過程で収益を上げていく手法です。