米国、英国の長期債、米国の投資適格社債と証券化商品に妙味
――債券市場ではさまざまな債券が取引されています。そのなかでも投資妙味の高いものは何でしょうか。
地域とセクター種別の2つの観点から選別できます。まず地域で見ると、金利水準を含むトータルリターンで投資妙味の高い地域を選ぶことが重要です。たとえば米国や英国は、まだ金融緩和が継続されると考えられ、その点からすれば、金利低下によって価格上昇が期待される長期債への投資は魅力的です。
一方、政策金利は据え置いているものの、市場金利の上昇圧力が強まると見られているユーロ圏、オーストラリア、日本についてはやや慎重に見ています。というのも、金利が上昇傾向をたどり始めたら、債券価格が下落して潜在的リターンが低下することになるからです。
また新興国については、世界的なインフレの鎮静化に伴い、徐々に金利水準は落ち着いていくものと見ています。米国の金利低下が進めば現地通貨建て債券の投資が有利になりますし、南アフリカのように現在行われている経済構造改革によってリスクプレミアムが低下し、それが投資妙味につながる国もあります。南アの他に、一部のラテンアメリカの諸国にも注目しています。中国に関しては、政策が不透明であり、経済の低迷も長引いているため慎重です。
次に、セクター種別で見ると、米国の投資適格社債、ならびに証券化商品に妙味があると考えます。米国経済の成長性が依然としてポジティブな中、これらのクレジットセクターはファンダメンタルズに支えられることになるでしょう。もっとも、冒頭に述べた通り、2025年に比べて26年は市場全体のボラティリティは高まるでしょうが、財務健全性の高い大企業の社債市場に関しては引き続き安定的な値動きとなると見ています。特に保険ブローカー、アセットマネジメントなど、ディフェンシブなセクターに注目しています。
また証券化商品については、CLO(ローン担保証券)やRMBS(住宅ローン担保証券)のうち格付けがAAクラスのものが良いでしょう。
その代わりとして、ハイ・イールド社債は今後、マーケットのボラティリティが高まると予想されるため慎重に見ています。
ハイ・イールド債を選ぶ視点
――あえてハイ・イールド社債の中から投資対象を選ぶとしたら、何が良いですか。
保有するハイ・イールド社債の銘柄選択にあたっては、よりクオリティの高い企業を選んでいます。格付けで言うとBB格、せめてB格以上のものが対象です。現在、ベースとなる米国債の金利水準はある程度の高さを維持しているので、BB格でも十分に高いリターンが期待できます。
興味深いことに、この10年間で、ハイ・イールド社債市場の構成が大きく変わってきました。このセクターの中で相対的にクオリティの高いものが、ハイ・イールド社債市場全体の大部分を占めるようになってきています。かつてのハイ・イールド社債市場は「ジャンク債」などと言われたように、経営破綻に直面した企業の社債が多数、流通していましたが、多くの場合、この手のディストレストな債券発行による資金調達は、「ダイレクトレンディング」などと呼ばれる機関投資家によるプライベートなクレジット市場へと移行しています。主に機関投資家による投資で急速に成長したプライベート・クレジット市場は、経営困難に陥った企業が、ハイ・イールド債市場から離れ、資金調達を行う市場として拡大しました。
