手作りの朝食が招いた価値観の衝突
姉と私の価値観の違いを痛感したのが、ちょうど1年前。姉と陸人が我が家に泊まった際の出来事でした。
いつも年の暮れは31日の午前中に一家3人でやって来て、近所のお蕎麦屋さんの年越しそばを皆で食べた後、隣県の義兄の実家に慌ただしく出発していくのが恒例でした。しかし、去年は義兄が31日に出勤となり、姉と陸人だけが30日の晩に泊まることになったのです。
31日の朝食は、焼きたてのパンと手作りのジャムにマーガリン、目玉焼き、両親が家庭菜園で作った野菜のサラダという我が家の定番メニューをテーブルに並べました。
私が前夜から仕込んでおいて朝焼き上げるパンはうちの家族には好評ですが、どうやら、陸人の口には合わなかったようです。姉が「ジャムをもらったら?」と言うので作ったばかりのキウイフルーツのジャムを塗ってあげると、「甘過ぎ」と顔をしかめました。
手作りのジャムは防腐剤を入れないので、砂糖を多めにして日持ちを良くします。ただ、そんなことを子供に言っても仕方がないのでマーガリンを塗ってあげようとしたら、陸人から「グラスフェッドバターはないの?」と尋ねられました。
姉が「マーガリンはトランス脂肪酸が入っているから、うちはバター派なの」とフォローしましたが、何も小学生のうちから高級なグラスフェッドバターを食べさせなくてもいいのに、と思いました。
あからさまに私の機嫌が悪くなったのを察した母が、「陸ちゃん、ばぁばのお家には普通のバターしかないの。ごめんね」と冷蔵庫からバターを出してきましたが、私に言わせれば、「そこ、謝るところじゃないから!」です。
案の定、そんな私たちの会話を興味深そうに聞いていた愛莉は、「ママ、グラスフェッドバターってどんなバター? おいしいの? 愛莉も食べてみたい!」とおねだりを始めました。
愛莉の年頃の女の子は、おしゃまで好奇心が旺盛です。その好奇心の矢印が、最近どうも姉的な価値観の方に向いているようで気になっています。
陸人はタワマンに住んで愛莉が欲しい物を何でも持っていて、愛莉の知らない私立の学校に通い、楽しそうな習い事もたくさんしています。それはうらやましいことでしょう。
同い年の従兄弟なのに、どうしてこんなに境遇が違うんだろう? そんなふうに感じるのは無理もありません。
