全固体電池が産業用でも実用化フェーズに 採用相次ぐ中核材料を本格量産

銅箔に続き、成長が期待されるのが全固体電池向けの材料です。三井金属は16年に固体電解質「Aソリッド 」を開発し、量産化を進めています。

全固体電池は、すべて固体の材料で作られる電池です。一般的な電池と異なり、可燃性の電解液を用いません。近年はモバイルバッテリーの事故が多く報道されていますが、全固体電池なら発火や破裂などの抑制が期待されます。

また、Aソリッドは硫黄系の電解質で、一般にセラミック系やポリマー系よりも大容量化・高出力化に向いています。さらに、作動温度域がマイナス40度~150度と広範です。このため、大きな電力を要し、かつ過酷な環境での稼働も想定される産業機器や電気自動車での採用が期待されます。

実際、産業用ではすでに実用化が進んでいます。Aソリッドはマクセル(旧・日立マクセル)に提供され、同社は22年にFA(工場自動化)機器向けに製品化しました。大容量の全固体電池の量産化は世界初とみられます。マクセルの全固体電池は23年にニコンのFA機器向けセンサーに採用されたほか、25年8月にはSUBARUの産業用ロボットにテスト採用されます。さらに、Aソリッドはカナデビア(旧・日立造船)の全固体電池にも使用されており、24年には初の商業受注を半導体製造装置向けに獲得しました。

このように、全固体電池は産業用でも試験段階から実用化段階へとステージを移しています。従来は、電子部品向けといった比較的小さい容量の製品化にとどまっていました。産業向けでも活用が進んできており、市場の拡大がうかがえます。今後は電気自動車の普及に伴い、全固体電池市場は2030年代に急激に拡大することが想定されています。

三井金属は、25年中にAソリッドの生産能力を4倍に増強するほか、27年には新しく初期量産工場を稼働させる計画です。稼働すれば、同社の生産能力は世界最大規模になる見込みです。24年には、Aソリッドが経済産業省の「蓄電池に係る供給確保計画」に認定され、投資額198億円に対し最大99億円の助成が決定しました。本格的な量産体制を構築し、全固体電池向けの材料を新しい利益の柱に育てます。