スマホ材料で世界シェア95% 今後はAIサーバーで需要拡大、増産へ

三井金属は大きく4つの事業を手掛けます。足元は「金属」が伸びていますが、中核は「機能材料」です。金属は利益変動が大きく、直近10年で3度の赤字を経験しています。一方、機能材料は比較的安定して利益を稼いできました。なお、自動車関連の事業は、子会社の三井金属アクトを売却したこともあり、縮小の方針です。

【セグメント情報(25年3月期)】

三井金属のセグメント情報(25年3月期)
 

※26年3月期より「モビリティ」は「自動車部品」に変更、排ガス浄化触媒は「機能材料」に、ダイカスト製品および粉末冶金製品は「その他の事業」に移管

出所:三井金属 決算短信
 
三井金属のセグメント経常利益(2016年3月期~2025年3月期)
 
出所:三井金属 決算短信より著者作成
 

機能材料の主力が銅箔です。「マイクロシン」と呼ぶキャリア(支持体)付きの極薄銅箔が看板商品で、半導体デバイスのパッケージ材料やプリント配線基板などに用いられます。最終品としては、スマートフォンが主な用途です。キャリア付き極薄銅箔の世界シェアは95%に達しており、世界中のスマートフォンに三井金属の製品が使われているといえます。

マイクロシンは今後、非スマホ領域での成長が期待されています。AI需要などからデータセンターは世界的に増設の傾向で、それらの機器向けに販売が伸びる想定です。さらに、自動運転の進展に伴うセンサーやレーダーの需要増加から、車載向け部品での採用も期待されます。既存のスマホ市場が成熟するなか、新領域での需要を獲得し、成長を図ります。

ほかに、表面が極めて平滑な「VSP」や、基盤に内蔵できるキャパシタ(コンデンサ)材の「ファラドフレックス」といった銅箔も提供しています。いずれも通信インフラ機器が主な用途で、AIサーバーや5G通信基地局向けに高成長が続く想定です。

【販売量の年予想成長率(23年3月期~31年3月期)】

・マイクロシン(パッケージ向け):13%
・マイクロシン(HDI向け)(※):6%
・VSP:13%
・VSPのうちハイグレード:43%
・ファラドフレックス:18%
※HDI(High Density Interconnected)…高密度実装配線基板

出所:三井金属 機能材料事業説明会資料

三井金属は、需要の高まりに増産で応えます。マイクロシンは現在の月490万平方メートルから27年に月520万平方メートル、30年には月560万平方メートルに引き上げます。また、VSPは26年9月までに1.45倍に、ファラドフレックスは26年3月までに1.6倍に生産能力を増強する計画です。

さらに、報道では半導体向けに熱膨張抑制材を量産開始すると伝えられています。いずれもデジタル化が進む世界で成長が期待される領域で、三井金属は生産を増やし収益につなげる狙いです。