2024年の3月にゼロ金利政策が解除され、金利の上昇が続いています。高市首相の誕生で今後の金利の動向にも注目が集まっていることは、報道を通じてご存知でしょう。

では、金利が上がると、一般の家庭にはどんな影響があるのでしょうか?

決して他人ごとではない金利のいろはについて、運用歴30年の金利のプロが解説します。(全3回の3回)

※本稿は、福室光生著『投資は金利が9割 運用歴30年のプロが教える「儲ける技術」』(KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。

株式市場の動きを理解したい場合

2024年、日本の株式市場は大きな波乱に見舞われました。

春先に日経平均株価がバブル崩壊後の最高値を超えるほど上昇したかと思えば、夏には歴史的な急落を経験しました。

夏の株価急落の引き金の1つとなったのが、日銀の利上げでした。金利と株価の関係はここ数年、特に複雑化している印象ですが、以下のように整理できます。

好景気になると通常、株価は上がります。インフレにもなりやすいので金利は上昇(=債券価格は下落)します。

株式と債券の価格が逆方向に動きやすいのは、このためです。

さらに詳しく見てみましょう。

「名目金利=インフレ率+実質金利」ですから、金利上昇の影響をインフレ率と実質金利に分けて考えてみます。

まず、インフレ率の株価に対する影響ですが、企業収益がインフレ率と同程度に上昇すると仮定すると、理論的にはインフレになったその時点では影響がなく、その後、株価の上昇率はインフレ率の増加分だけ高まります。

現実には、優良企業であれば価格決定力が強くインフレ率以上に値上げすることが可能で、収益にもインフレ率以上にプラスになることが多いため、総じてインフレ率の上昇は株価を上昇させやすいと言ってよいでしょう。

一方で、実質金利が上昇するとお金の価値が相対的に高まり、リスクをとって投資する価値が薄れるため、株式、債券ともに価格が低下します。

実質金利の上昇によって株価が下落した典型的な例としては、中央銀行がサプライズで利上げを行ったケースが挙げられます。

実際の市場の動きを振り返ってみましょう。

日銀はまず2024年3月にマイナス金利政策を解除し、プラス0.1%へと利上げを行いました。

このタイミングでは株式市場はむしろ楽観的なムードで、日経平均株価は、史上最高値を更新して一時、4万円目前に迫る場面もありました。

しかし、7月末に日銀が0.25%への追加利上げを決定すると、状況が一変します。

直後の8月初旬、東京市場は史上例を見ない急落に見舞われました。

日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)は7月末~8月初めのわずか数営業日で、ともに12%以上も下落したのです。

この下落率は1987年の「ブラックマンデー」以来となる大きさでした。まさに「大暴落」と言える光景で、株式市場には恐怖感が広がりました。