業界屈指の利益額 米最大手と協業、「連結しない」グローバル化に秘訣
まずは概要を押さえましょう。
大和工業は中堅の鉄鋼メーカーです。鉄スクラップから鉄鋼を生産する電炉メーカーで、主にH形鋼を生産しています。H形鋼は汎用品ながら、大和工業は店売り(※)が少なく、国内は80%がプロジェクトにひもづく案件です。店売りと比べ高採算となりやすく、電炉メーカーとしては国内トップクラスの利益を上げています。
※店売り…最終仕向け先を決めず問屋に販売する方法。市況影響が比較的強い傾向
【主な電炉メーカーの経常利益(25年3月期)】
・大和工業:544.0億円
・東京製鐵:316.1億円
・共英製鋼:157.5億円
・中山製鋼所:81.2億円
出所:各社の決算短信
大きな特徴はパートナーシップに基づく海外進出です。海外の有力企業と合弁会社を設立し、主に連結子会社ではなく持分法適用会社としてグループに取り込みます。連結化と比べると支配が弱く、たとえば日本製鉄による米USスチールの完全子会社化とは対照的な方法といえます。
持分法で海外展開を進める理由は、経営に裁量を与えるためです。海外進出は、慣習の違いが壁になる場合があります。そこで、知見を持つ現地パートナーが経営を担い、大和工業は技術支援に注力します。これにより、地域の違いによる参入障壁を緩和し、海外事業を円滑に進める狙いがあります。
代表的なものが米ニューコアとの協業です。ニューコアはアメリカ最大の鉄鋼メーカーで、世界鉄鋼協会(WSA)によると24年の粗鋼生産量は2066万トンと、USスチール(同1418万トン)を大幅に上回ります。大和工業は1987年にニューコアとパートナーシップを結び、現地に合弁会社を設立しました。当初の生産は年60万~70万トンほどでしたが、現在は年230万トンの生産能力を有するまでに成長しています。
ほかにも、粗鋼生産量で世界8位の韓国ポスコや、総合商社の住友商事といった有力企業とパートナーシップを結び、ベトナムやタイなどでも事業を展開します。25年3月期はグループで545.6万トンを販売しますが、うち持分法適用会社が288.5万トン(持分ベース)を占めました。
このような経緯から、大和工業は持分法適用会社が業績に大きな影響を与えます。持分法の投資損益は営業外に計上され、売上高や営業利益には影響しません。そのため大和工業の業績は、経常利益や純利益も確認するようにしましょう。
【大和工業の業績(25年3月期)】
・売上高:1683億円
・営業利益:115億円
・経常利益:544億円
・純利益:318億円
出所:大和工業 決算短信