各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、中国銀行のデータをもとに解説。

中国銀行の投信売れ筋ランキング(窓口販売件数)の2025年9月のトップ2は前月と同じ「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」、「ROBOPROファンド」だった。前月第3位の「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)」は第6位に落ち、同第4位だった「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド(隔月決算・予想分配金提示型)」は第5位に後退した。第3位には前月の第5位から「三菱UFJ純金ファンド」が上がり、第4位にはトップ10圏外から「ニッセイ・パワーテクノロジー株式ファンド」(愛称:パワテク)がランクインした。そして、第10位にもトップ10圏外から「次世代米国代表株ファンド」がランクインした。

運用成績で目を引く「パワテク」が4位にランクイン

中国銀行の売れ筋第4位にランクインした「ニッセイ・パワーテクノロジー株式ファンド」(愛称:パワテク)は、そのパフォーマンスで注目される。同ファンドは、日本を含む世界の上場株式から、主に「電力」に関連する優れた技術やビジネスモデルを有する企業を選んで投資するファンドだ。AI開発ブームに伴う大規模データセンターの増・新築は、データセンター稼働のために巨大な電力需要を伴い、また、EV(電気自動車)をはじめ、現在のテクノロジーは電力消費を前提としたものが多い。それだけに、世界的に発電や送電、蓄電など電力に関連する事業への注目が高まっている。

たとえば、同ファンドが10月に発行したマンスリーレポートでは、米オープンAIが「開発する次世代AIモデル(GPT-5以降)のトレーニングと推論に必要となる、天文学的な規模の計算能力を確保するため」に米オラクルから今後約5年間で総額3000億ドル相当のコンピューティングパワー(計算能力)を購入する契約を結んだことを取り上げている。この契約で必要とされる電力容量は4.5ギガワットと報じられ、これは米国の約400万世帯の消費電力に匹敵する規模だという。1つのAIモデルの開発のために、これほど巨大な電力需要が必要になる。米国にはオープンAI以外にもAI開発企業は多数存在し、マイクロソフト、アマゾン、メタ・プラットフォームズ、グーグル(アルファベット)などクラウド大手企業は競ってAIデータセンター向けの設備投資計画を発表している。これらのデータセンター向けにも大量の電力が消費されることは間違いない。

また、同ファンドでは、「電力供給力を急速に向上させることが難しい環境下で、電力消費を柔軟にコントロールする技術等にテクノロジーの進化余地が大きく、新たな技術の収益力を確認しながら、投資可能かを判断する」とし、「電力コントロール技術は、特定の企業あるいは国が占有する技術ではなく、世界中に散らばっているため、先入観を持たず、特定の企業への投資にこだわらず、広い視野と行動によって、投資候補を拡大させる方針」と、グローバル市場で投資対象が広がり、かつ、「電力」が持続可能な投資テーマであることを示している。今後が楽しみなファンドといえる。