「選択と集中」営業利益率10%へ 投資倍増、3年で1400億円
続いて、カナデビアが目指す方向性に迫りましょう。同社は現在、利益率の改善に取り組んでいます。環境プラントで世界トップのシェアを持ちながら、営業利益率は4.41%(25年3月期)にとどまります。もっとも、プラント建設会社の利益率は低い傾向にあり、競合より極端に悪いというわけではありません。
【主なプラント建設会社の営業利益率(25年3月期)】
・メタウォーター:5.93%
・千代田化工建設:5.34%
・カナデビア:4.41%
・東洋エンジニアリング:0.93%
・日揮ホールディングス:-1.34%
出所:各社の決算短信
業界では平均的な水準とはいえ、カナデビアは低採算を課題と認識しており、営業利益率を31年3月期までに10%超へ引き上げる方針です。既存事業の成長で7%、成長事業の創出および拡大で3%とし、計10%を目指します。
成長事業のうち、重点投資対象に据えるのが「脱炭素化」と「資源環境」および「水事業」、そしてライフサイエンス関連事業などの「安全で豊かな街づくり」事業です。うちライフサイエンス事業は新規参入で、創薬や再生医療、次世代医療機器への進出を目指します。進出に当たっては機械工学や電気制御といった自社の技術を応用します。
投資額も引き上げます。カナデビアは23年3月期までの3年間で640億円を投じました。これを約2倍に増加し、26年3月期までの3年間では1400億円を投じる計画です。うち成長事業へ振り向ける事業投資と開発投資はそれぞれ750億円と280億円を想定します。
【カナデビアの主な投資計画(~26年3月期)】
<事業投資:750億円規模>
・Waste to X(※):約400億円
・風力発電:50億~100億円
・その他(水事業・原子力関連事業のM&A):約250億円
※Waste to X(廃棄物の資源化)…欧米バイオガス事業、海外廃棄物発電、リサイクル事業
<開発投資:280億円規模>
・次世代廃棄物発電
・洋上風力発電、水電解装置大型化、LNG船メタンスリップ(※)削減技術
・ライフサイエンス
・スマート工場化
※メタンスリップ…LNG船エンジンの排ガスに未燃焼メタンが残る現象
出所:カナデビア 個人投資家向け説明会資料
投資を強める一方で、事業の整理も進めてきました。22年には甲板機械の日本プスネスを売却したほか、物流のオーナミを非連結化します。25年にはプレス機械のエイチアンドエフを譲渡しました。
このように、カナデビアは事業の選択と集中を進行中です。計画の初年度である24年3月期は計384億円を投じ、うち150億円を事業投資に、111億円を開発投資に充てました。M&Aも積極的で、プラントのアフターサービス企業(BWRS社、デンマーク)やアセットマネジメント企業(アイオナ社など、イギリス)などを相次いで買収しています。不採算事業の切り離しと成長事業への集約を同時に進め、利益率の向上を目指します。