リーマン後は赤字なし 好採算を支える「特命受注」と「長谷工版BIM」とは
配当金を重視した投資では、利益の安定性が重要となってきます。配当金の原資は企業が稼いだ利益であり、利益が薄いと配当を出しづらくなるためです。
その観点から長谷工コーポレーションを見てみましょう。建設業では利益率が比較的高く、リーマンショックを受けた09年3月期を最後に最終赤字はありません。また、その09年3月期においても、経常利益までの各段階利益は黒字を確保しています。
【主な建設会社の営業利益率(25年3月期)】
・長谷工コーポレーション:7.19%
・鹿島建設:5.22%
・大林組:5.47%
・大成建設:5.58%
・清水建設:3.65%
・(参考)東証プライム建設業63社平均:6.36%
出所:各社の決算短信、日本取引所グループ 決算短信集計結果
高い利益率に貢献しているのが「特命受注方式」です。自ら取得した建設用地をデベロッパーに持ち込み、マンションの建設を提案して受注する方法を指します。一般的な競争受注と比べ、収益性が高くなりやすいメリットがあります。
長谷工コーポレーションは特命受注が中心です。直近10年の比率は70~90%台と、受注の大部分を特命受注で獲得しています。また、設計と工事の双方を請け負う設計施工の比率も同80~90%台と高く、好採算の案件に集中できている様子がうかがえます。
もう1つの強みが「長谷工版BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」です。BIMとは、建物の3Dモデルや設計図などを一元的に管理できるシステムを指します。BIMは設計と施工で分離していることが一般的ですが、長谷工版BIMは一貫してカバーしており、効果的な「フロントローディング(※)」を実践できています。
※フロントローディング…必要な情報を初期の設計段階から盛り込み、施工段階の修正を抑制することで全体の生産性向上を図る取り組み
さらに、長谷工版BIMは販売や販売後の管理・修繕などのデータも網羅します。建物の3Dモデルや各種のデータは、マンション販売の現場でも活用されており、成約率の向上への寄与が期待されます。長谷工コーポレーションは21年にBIM導入率が100%に達しており、デベロッパーへの提案力を支えています。