特殊鋼の中堅メーカー 鋼材は苦戦、ばね部品の好調がカバー

三菱製鋼は、株式市場では比較的規模の小さい銘柄です。事業を知るために概要も押さえておきましょう。

三菱製鋼は特殊鋼メーカーの一角です。鉄と炭素で構成される普通鋼に対し、元素の添加や成分の調整で特別な機能を持たせた鋼材を特殊鋼と呼びます。たとえば、代表的な特殊鋼のステンレスは鉄とクロムおよびニッケルの合金です。三菱製鋼は自動車や建設機械業界が主な顧客で、特殊鋼メーカーでは中堅に位置します。

【主な特殊鋼メーカーの売り上げ(25年3月期)】

・大同特殊鋼:5749億円
・愛知製鋼:2993億円
・三菱製鋼:1596億円
・東北特殊鋼:212億円
※大同特殊鋼および愛知製鋼は国際会計基準(売上収益)、その他は日本基準(売上高)

出所:各社の決算短信

素材だけでなく、ばね部品メーカーとしての面も持ちます。自動車や建設機械用の大型の製品から、電子機器向けの精密ばねまで製造しています。先述のとおり、ばね事業は改善が進んでおり、特殊鋼鋼材事業に次ぐ収益源となっています。

【セグメント情報(25年3月期)】

三菱製鋼のセグメント情報(25年3月期)を表した図表
 
出所:三菱製鋼 決算短信
 

続いて業績です。特殊鋼鋼材は需要の減少や円安による輸入原材料価格の高騰などから苦戦していますが、ばね事業の改善がカバーし、営業利益は横ばいに踏みとどまっています。直近の25年3月期は、売上高が前期比6.1%減、営業利益が同36.5%増の減収増益で着地しました。

三菱製鋼の業績(2016年3月期~2025年3月期)
 
出所:三菱製鋼 決算短信より著者作成