無配から高還元へ転換 ばね事業が黒字化でゆとり
まずは配当金の推移を押さえましょう。
三菱製鋼が無配だったのは21年3月期までの2年間です。海外子会社の減損や、コロナ影響および高炉改修に伴う損失が重なり、2期連続の最終損失に転落しました。翌22年3月期は従来の水準を上回って復配。今期(26年3月期)は3期連続の増配を計画します。
無配から一転し、株主還元を積極化できているのは、ばね事業の改善が貢献しています。ばね事業は赤字が常態化していましたが、24年3月期に6期ぶりの黒字へ転換しました。赤字の主因だった北米で大幅な値上げを断行。三菱製鋼は撤退も覚悟しますが、現地の自動車メーカーを中心に受け入れられ、収益が改善しました。北米は複数の海外ばねメーカーが撤退していることから、三菱製鋼の受注は回復傾向です。厳しい環境でも事業を継続したことが実を結んだ格好です。
さらに、ばね事業は低迷が続いたドイツから撤退したほか、足元では精密ばね部品で大型受注を獲得し、増益をけん引しています。ばね事業が赤字を脱し、全体にゆとりが生まれたことで、三菱製鋼は株主還元にも資金を振り向けやすくなっています。
なお、ばね事業は精密ばねが好調な一方、自動車ばねが低迷しています。今後は自動車ばねで構造改革に取り組み、収益をさらに底上げする考えです。